@帝展入選作に見る植民地朝鮮―384―――文化政治期の女性表象をめぐって――研 究 者:韓国美術研究所 非常勤研究員 朴 美 貞はじめに1910年から45年に至る約36年間、日本の植民治下に置かれていた朝鮮は、日本国内とその植民地に設けられていた「官展」において様々に描き出されていた。そのうち「帝展」(注1)に入選した朝鮮表象は、管見の限り、166点―日本人画家の作品142点、朝鮮人画家24点―で、日本人画家の入選作142点の内訳は、人物95点、風景44点、静物3点である。官展における朝鮮イメージに関する最近の研究としては、出品作品を「文化的支配」としてのオリエンタリズム/ジェンダー的な文脈で読む作業が試みられている(注2)。帝展に関しても、制度論的/受容史的な観点からの研究は行われているが、朝鮮表象を、具体的な作品に即して、通時的・共時的に検証する試みはいまだ十分に行われているわけではない(注3)。本論の課題は、日本人が朝鮮の人物を描いた作品95点―男女風俗20点/男性風俗18点/女性風俗55点/子供風俗2点―のうち、「文化政治期」に描かれた女性イメージ26点に限定して、それらが、朝鮮の女性をどのように表象しているかを考察することである。「文化政治期」とは、36年に及ぶ植民地時代を、統治政策の点で区分した3つの時期のうち、第一期の「武断統治期」(日韓併合の1910年から21年まで)に続く第二期(1922年から36年まで)で、第三期の「戦争総動員期」(日中戦争勃発の1937年から44年まで)に先駆ける時期である。この課題を解決するために、本論では、次の手順で論を進める。まず、第1章では、植民地期を通して描かれた女性表象55点の量的・時期的変化を示した表を基に、第二期における女性表象全26点の概略を記す。第2章では、この第二期を代表する典型的な作品2点を、当時の朝鮮の政治的・経済的・社会的・文化的コンテクストを参照しながら解釈する。具体的には、三井萬里の《暮るトロ路》は、朝鮮女性を「力強い/健康的な存在」―「働妻健母」―として表象すること、梶原非佐子の《機織》は3章では、特殊な作例として、中谷金鵄の《鶏を抱く少女》を取り上げ、その作品が、象徴的に、日本軍部に協力して繁栄をもたらされる朝鮮を暗示することを明らかにする。おわりに、このような朝鮮表象が、日本の帝展において日本人に対して展示され「知的な/勤勉な存在」―「良妻賢母」―として表象することを明らかにする。第
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