―387―[作品No.23]歌舞の合間に、座り込んで談笑している二人の妓生[作品No.24]室内で屏風を背後に立ちポーズを取る妓生[作品No.25]僧舞を披露する芸能者[作品No.26]平牀にくつろいでいる二人の妓生第二期における女性表象は、基本的には、当時の朝鮮の「現実」の既婚女性たちの姿に合わせて、彼女たちを、一方では、本来男性の仕事ともいえる農作業、手工業の手伝い、市場での野菜売りなど、屋外での肉体労働や、屋内での機織りに携わる姿として描くものが多い。次の第2章では、そのような傾向を代表する作品として、★印を付した作品2点と、特殊な作品を1点取り上げて詳細を分析する。第2章 労働する女性―「働妻健母」と「良妻賢母」第9回帝展(1928年)の入選作、三井萬里(生没年不詳)の日本画《暮るトロ路》(法量不明、〔図2〕)は、朝鮮の女性が従事することになった、農業以外の新たな種類の労働を暗示する。三人の既婚女性が、夕方、何かの労働を終えて帰宅する。右側に立っている女性は、白いチョゴリに薄い黒のチマを着ている。右手に薬缶を持って、左手で、チマの裾を少し上げている。チマの下に下着の白いバチが見え、白いボソンに色つきのゴムシンを履いている。そして、身体の腰のところで、労働する時にいつも行われるように、組紐を結んでいる。その視線は、画面の左方向、前進する方向へと向けられている。彼女の右側には、白いチマ・チョゴリに白いボソンとゴムシンを履いた女性が、頭に、カボチャの入ったかごを載せて、右手で抑え、左手は腰にかけている。彼女もやはり腰に組紐を結んでいる。その視線は下に向けられている。彼女の後ろに見える女性もまた、同じように白いチマ・チョゴリに白いボソンとゴムシンを履き、横顔を見せて、視線を下に向けている。三人の女性は、共通して足を開き、腰に腕をかけているポーズは、健康で力強い女性を感じさせる。この作品は、朝鮮の婦女を、単に、肉体労働に携わる「健康な/力強い女性」―「働妻健母」―として表象するだけではない。この作品は、従来の作品には描かれることのなかった新しい労働の種類を暗示する。もちろん、彼女たちが携わった労働が何であったかを正確に限定することはできないが、彼女らが立っている足下に、列車の線路―「トロ路」―が横切っているのが見えることから、彼女たちは近代化された産業―集団労働―に従事していたように見える。肉体仕事は厳しく、彼女たちは疲れ果てているはずである。それにもかかわらず、月が彼女たちの帰り道を明
元のページ ../index.html#396