―497―るのであろう。白毫辺りの高さで、像内面を水平に鉄錆が一周する〔図8〕。中型を針金で巻いてそのまま鋳込んだようで、中型固定用の工作かと思われるが詳らかにし難い。体部は中型と外型との間に計18ないし19箇の銅型持を鋳込んでいる。その内訳は正面4段4箇、背面4段4箇、左側面3段5箇、右側面5段6箇もしくは4段5箇。最上段分は83.5〜87cmの高さになり、以下約15〜32cm間隔で各列上下に並ぶ。各型持は像内に立方体状に1cmほど突出し(つまり中型に刺している)、それぞれ断面が横1cm、縦1.2〜1.3cmほどの縦長の矩形をなす。これらは正面最下段分を除き表面からは存在がうかがえない。像内面には中子土が顎下、上背部、右腕部、右前膊、底面付近(背面で像内底面より約20cm高まで、正面は未確認)等に付着する。右肩外側部の中央(耳後の位置から連続する深さの位置)にかすかに前後の段差が認められ、後述する木型=長興寺像のこの位置には矧ぎ目がないので、これは外型を割った境目であることが明らかである。すなわち本像の外型は前後合わせ型とみられる。また左手首上面および袖口にも型の合わせ目とみられる段差が存在する。なお頭部右側面の髪部も耳後を通る線で大きく段差がつき、前側が高くなるが、これは後で述べるように外型の合わせ目ではなく、原型の矧ぎ目にできた段差である。後頭部中央にも細い縦線状に形状不明瞭な箇所が見受けられるが、これも原型の正中矧ぎ目に沿う木屎による処置の痕跡が転写されたものである。像底から両足先および両足éを含む正面脛部にかけて鋳掛ける〔図9〕。鋳境は正面では袈裟と裙の境目を上下して走り、左側面では裙裾後縁に斜めに降りて背面近くで像底に入り込み、右側面では半ばで像底に入り込む。像底には裙裾裏面にあたる左右端近くに像内に抜ける孔を設けている(ここから肉眼およびファイバースコープにより像内観察を行った)〔図10〕。背面地付(一鋳した主部の下端にあたる)やや上(1.7〜2.5cm高)には中央および左右方の三箇所に、それぞれ径1.5cm内外の鋳掛けあるいは嵌め金が施されている。うち右方分は鉄製で、これのみが矩形である。この鋳掛けあるいは嵌め金は像底〜正面脛部の鋳掛けの接合のための鋳からくりに関わるものと思われる。右足甲に前後方向の線がみえ、鋳掛け部も割り型で行ったかとみられる。次に長興寺像は、頭体幹部を通して檜(か)の1材より彫出し、正中線で左右に割ったうえ各々を前後に割り、また面部を割離して玉眼を嵌入する。内刳りは頭・体部とも施すが両者はつながらない。両肩外側部は、左肩分は前膊および外側袖を含み前後3材で、手首先を袖口に差込み矧ぎとし、内側袖に別材を矧ぐ。右肩分は外側袖を含み前後3材で前膊上面に横1材を矧ぎ、袖内の同下面(後補)および内側袖に別材
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