鹿島美術研究 年報第22号別冊(2005)
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―508―母と楮繊維の混じった土で質感の違いを表す造形表面は不均質に仕上がってしまう。仕上げ土に目止めとして墨をほぼ等身の塑像に塗り終えるにはずいぶんな量を使うで溶いて使ったと想像しているが今回の実験では手に入らなかった。墨の種類は油煙墨と松煙墨が考えられるが油煙墨は塗布した後にてかり(微量の油分)が残り次に塗り重ねる白土下地の膠をはじいてしまう可能性があるので避けた。今回の手板実験では清代に造られた中国製の固形松煙墨を硯で磨りおろして用いた。したがって手板に塗った墨液には膠は加えていない。墨液の濃度は平筆で仕上げ土の上をゆっくり引き、にじまない程度のもので1回塗りの(区画3)と3回塗り重ねの(区画4)を作った。明礬を加えたドーサ液の混合比は膠12g+水250cc+明礬1匁。白土と雲母の混合比は1:0.25で乳鉢にて十分に擂り合わせた。1)壁面手板区分け工程手順1〔図4−1〕手板区分けは仕上げ土の表面を均等に4区画に割付した。基底面区画1は仕上げ土のまま、基底面区画2は仕上げ土表面に礬砂引きを行った。2)壁面区分け工程手順2〔図4−2〕松煙墨を硯で摺った溶液を塗布。区画3が一回塗布、区画4は3回塗布した。3)壁面区分け工程手順3〔図4−3〕基底面中央4区画にまたがりキラ引き(白土1:雲母0.25)を3回塗布する。4)壁面区分け工程手順4〔図4−4・5〕基底面中央に塗ったキラ引き白土下地の上に繧繝を描く。キラ引き白土下地の上に描いた朱、緑、青、の繧繝は下地の影響が描画施工にどのように起きるのかを見るため文様を壁面手板中央に4区画またがるように描いた。壁面手板配置図松煙墨3回塗布 (区画4) 松煙墨1回塗布 (区画3) キラ引き白土下地 3回塗布 華文 繧繝 基底面は仕上げ土のまま (区画1) 基底面には礬砂引き (区画2) はいずみであろうから磨り下ろしに手間のかかる固形墨の使用は考えにくく、粉状の掃墨を膠

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