鹿島美術研究 年報第22号別冊(2005)
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注白色下地が白土である科学的根拠はない。 ストゥツコ(漆喰技法):石灰岩(炭酸カルシウム)を焼いて水を加え消石灰(水酸化カルシ■相粉技法:胡麻油と蜜蝋を一緒に溶かした溶剤に方解石の粉末やカオリンを加えて練り合わ■和紙、布、板などの描画基底に膠を用いて絵の具を塗る場合絵の具のにじみ止めの処置が必要■彩色剥離は奈良時代の塑像では珍しくない、仕上げ土の目止めが難しいことを証明している。―511―Ⅲ.結びいて描画基底である仕上げ土の目止めに用いたと考えられる。られたと思われる法隆寺の塑像群に残る白色下地とは施工材料や技術を異にすることが考えられ、盛唐期彩色技術の請来後に造られた可能性が高い。奈良時代の彩色工法を良く残す執金剛神像はじめ、法華堂の日光・月光像、戒壇堂四天王像は彫刻としての完成度も高く、彩色にも非常に丁寧な仕事が行われたと思われる。研究課題とした「塑像彩色面下層に見られる黒色」は目視に拠る確認だけであるが天平塑像の源流である中国の彩塑像にも確認することはできなかった。炳霊寺の涅槃釈迦像修理調査や研究者への聞き取りからも中国の彩塑像には黒色施工の工程は存在しないようである。やり残した課題も多い。壁面手板や天人レリーフに施した黒色施工から繧繝彩色施工までの報告は行うことができたが、彩色施工後の経年変化を追う録も行えていない。塑像の調査や研究論文では心木構造や表面に残った彩色文様の調査は行われているが、仕上げ土に糊分(膠・布海苔)が使用されたのかなど土に含ま行えなかった。中国本土で求めた塑像に関する資料本にも彩色工程の記述はない。終わりに手板の彩色試験では奈良教育大学大山研究室にお世話になりました。ウム)を作り、膠を加えて塑形材とする。せ、乾燥後粉末にしたものを水で溶いて塗り、乾燥後磨き、艶を出す。になる、このにじみを止める処置をドーサ引きと言う。しゃんふん日光・月光像に見られる白色下地は相粉技法と良く似ており、奈良時代初期に造を用いた実証試験もしゃんふん必要がある。敦煌に遺された盛唐期の彩色塑像に施されている相粉こうどれる有機物質の科学的な分析調査の発表は行われていない。黄土はいずみ手板での実証研究から東大寺の塑像群彩色面最下層に見られる黒色は掃墨を膠で溶技法の正確な記

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