―60―「山水譜」とあるもの。巻六が見返しに「無双譜」とあるもの。巻七が見返しに「方らず、実際に見てみないと後八種と四体譜を分けることさえままならない。諸本の異同の意味するところについてはいまだ不明な点が多いが、中間報告として、今回調査した諸本の異同を報告しておきたい。後八種諸本の異同と前後関係についてはすでに中野三敏氏の報告がある(注4)。初印に近いものは題箋がなく巻の順序が不明であるため、ここでは後印の題箋によって巻の順序を仮に定めて記述する。すなわち巻一が見返しに「古今画藪後八種 霞亭珍蔵」とあるもの。巻二が「独先百花発」と題した梅の図ではじまるもの。巻三が見返しに「雑体」とあるもの。巻四が見返しに「奇品」とあるもの。巻五が見返しに于魯墨譜選 霞亭珍蔵」とあるもの。巻八が見返しに「笠翁居室図式 霞亭蔵」とあり奥付があるものである。今回調査したなかでは、ハーバード大学燕京図書館所蔵本(Y40−742以下ハーバードA本と記述)が比較的早い。表紙は替表紙と思われる。紙は唐紙とみる。巻八欠。巻一の宋紫石の序に「紫石」白文方印「君赫」朱文方印が押され、沢東宿の例言に「東宿印」白文方印「沢氏」朱文方印が押される。中野氏が指摘した後印本との相違点、巻二5ウ6オの代赭・薄墨・藍の鳥も確認できる。今回の調査の結果わかった相違点の一つとして、巻二7ウ8オにおける「桃花野牛図」の題字の有無、遠山の有無があるが、ハーバードA本には題字があり、右側の遠山がある。また別の相違点、巻三8ウ9オにおける「一路功名図」の題字の有無については、題字がある。ライデン国立民族学博物館所蔵本はハーバードA本と摺りや版の状態、紙質は大差ない。表紙は他の後八種・四体譜にもよくみられる黄色の厚手の紙で、原表紙であろう。早い時期であることを示すと思われる巻一の宋紫石・沢東宿の印、巻二5ウ6オの代赭・薄墨・藍の鳥がある。巻二7ウ8オ「桃花野牛図」は題字があるが右の遠山がない。題字があって右の遠山がないのは、後印本の当該箇所と一致する。この相違点は複雑な出版状況をうかがわせる。巻三8ウ9オの「一路功名図」は題字がある。初印本と後印本には、巻一の沢東宿例言に続く半丁に選者沢東宿があるかどうか、校者が南白珪・田元鳳もしくは宋紫山なのかという相違点がある(注5)。選者沢東宿があり、校者が南白珪・田元鳳であるほうが早く、選者がなく校者が宋紫山であるものが遅い摺りであることは基本的に疑いないが、摺りの早い遅いにかかわらず、たいていの本は門人として藤孝叔以下五人の名が記されている。しかしライデン本は門人部分が空白になっており、特異である。シカゴ美術館所蔵本(フレデリック・グッキンコレクション 以下シカゴA本と記
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