―61―述)は特異な点が多い。表紙は薄茶色で替表紙か。巻一、二、三、五の四冊のみである。巻一の沢東宿例言に続く半丁に選者沢東宿とあり、校者が南白珪・田元鳳と記される。巻二5ウ6オの代赭・薄墨・藍の鳥もある。しかしながら巻一の宋紫石・沢東宿の印については、宋紫石の印が墨版で「宋紫石印」「霞亭」とあり、沢東宿の印はない。滝長・の序の後ろに、他の諸本にはない表に「東都 田松茂書」とある1丁が入る。巻二7ウ8オ「桃花野牛図」は題字がなく、右の遠山もない。巻三、沈南蘋の宋紫石による模写の四図であることを記し、宋紫石の署名があるが、そこに「紫石」白文方印「君赫」朱文方印が押される。巻三8ウ9オの「一路功名図」は題字がない。巻三8ウ9オの「一路功名図」は題字があるものがほとんどだが、個人蔵の巻三のみの端本も題字がない〔図9〕。大英博物館所蔵本(JH127)は黄色の厚手表紙で単枠縹色布目地紙の題箋を持つ。紙は奉書。七冊目は、四体譜の「B毛譜」で、本来の巻七は欠。巻一の宋紫石・沢東宿の印はない。選者沢東宿がなく、校者は宋紫山。巻二5ウ6オの代赭・薄墨・藍の鳥もない。巻三8ウ9オの「一路功名図」は題字がある。他はおおむね標準的な後印本の特徴を示す。巻二7ウ8オ「桃花野牛図」に題字があって右側の遠山も左の背景の山もないのが他の諸本と異なる。中野三敏氏蔵本、シカゴ美術館所蔵本(ライアスン・コレクション)は標準的な後印本である。ハーバード大学燕京図書館所蔵本(TJ6245−3210)も標準的な後印本であるが、後八種八冊と四体譜のうち四冊合わせて十二冊で伝わっている。千葉市美術館所蔵本(ラヴィッツ・コレクション B−181)は黄色の厚手表紙で奉書摺りの後印本であるが、巻一の見返しが墨摺りで題箋が白い。後印本でも更に遅いものと推定する。本助成を受ける以前から『古今画藪後八種』の調査をしてきたが、今回集中的に調査を行い、しかも複数のバージョンを所蔵する調査先に恵まれたため、巻二7ウ8オにおける「桃花野牛図」の題字の有無、巻三8ウ9オにおける「一路功名図」の題字の有無〔図10〕といった顕著な相違点を見出すことができた。『古今画藪後八種四体譜』は後八種に比べて残っている本が少ない。松浦史料博物館(未調査)、東京芸術大学附属図書館、ハーバード大学燕京図書館に五冊揃っている。初印に近いものは題箋がなく巻の順序が不明であるため、ここでは後印の縹色題箋によって巻の順序を仮に定めて記述する。すなわち巻一が見返しに「宋紫石南白
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