統一新羅時代礼拝像の機能とその意味についての研究―103―――仏教彫刻に現われた香炉を手がかりにして――研 究 者:韓国文物研究院学芸研究員はじめに香炉とは香を焚く容器である。香は悪臭および虫を消除する時、あるいは精神を清めるために使われる。一方、宗教儀式で主に使われることは周知の事実である。特に仏教では体臭を消すために香を使用したインドの風習がそのまま取り入れられて供養物の一つとしての位置をしめている(注1)。以後、香は供養者と礼拝対象との媒介物の役割として多く供養されることがわかり、そのことは経典にも見ることができる。さらにこのような香の使用は仏像でもあらわされる。例えば、パキスタンのラホル中央博物館にある釈迦苦行像のように台座正面に香炉を置き、その両側に供養者が礼拝する姿があらわされる。また、新田コレクションにある西晋の金銅仏坐像のように香炉だけが浮き彫りされて、供養者の香供養を縮約して象徴的にあらわされる場合もある。仏像はその造像目的を礼拝用と記念用に分ければ、香炉が表現された仏像は前者になる。すなわち、香炉があらわされた仏像は記念碑的に造像されたのではなく、個人および団体の礼拝のために造成された仏像であることを示す証拠になる(注2)。したがって、香炉があらわされた仏像は礼拝用として当時の信仰を反映して造像された可能性が高い。このような前提で本研究では三国時代から初期統一新羅時代までの仏像、なかでも香炉があらわされた仏像を対象にして当時の実際的な信仰の有様を注出することをその目的にする。そこで、韓国で最古の礼拝像である長川1号墳礼仏図によって供養者と香炉との関係を推定した後、初期統一新羅時代の仏像のうち、香炉があらわされた例とその特性を考察する。以後、これに基づいて当時の信仰生活の有様を明らかにしてみたい。1.礼拝像にあらわれた香炉―長川1号墳礼仏図5世紀半ばの作と推定される長川1号墳は集安市内から北東方向に約25キロメーターほど離れたところに位置する。礼仏図は前室から玄室につながる入口の階段式天井に画かれている〔図1〕。この壁画の画面全体には花びらが散らされており、画面の中央に大きな火f光背を持つ如来坐像がある。この像の右側に墓主である夫婦と2人の侍女、2人の蓮華化生する童子が描かれている。仏像の左側には礼拝する墓主の夫池江伊
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