鹿島美術研究 年報第23号別冊(2006)
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3国際写真サロン入選作にみる“日本的イメージ”―166―SFPは世界でも指折りの写真作品コレクションで知られ、その数は10万点とも言われる。ヨーロッパ各地の会員たちやその遺族から寄贈されたものだが、来歴不明のもSFP所蔵の日本写真コレクションは、近年、少なくとも二度展示されており、それ――フランス写真協会所蔵作品調査――研 究 者:渋谷区立松濤美術館 学芸員1 フランス写真協会(SFP)概要フランス写真協会Société française de la photographie(以下SFP)は、1854年に写真を研究する科学者、芸術家たちの私的な集まりとして結成された。以後、写真関係者の急速な増加により会員数は増大し、1892年に公益団体になる。さらに、Photo-Clubde Paris が1894年から主催していた写真の国際公募展 Salon international d’Artphotographie を1915年から引き継いで主催し、ロンドンの王立写真協会とならぶ権威を持ってその名を知られた。第二次世界大戦後は、規模を縮小し、現在は出版、調査など、写真研究の場として活動している。のが少なくない。ニエプス、ダゲール、バヤールら、フランス写真の所蔵品は特に充実しており、日本でも同協会所蔵品により「ロベール・ドマシー展」(1983年)、「写真の源流1822−1906展」(1984年)が開催されている。欧米の写真コレクションは重要作家を中心に研究が進んでおり、ホームページにもアップされている。一方でアジア、中近東、南アメリカ、アフリカなど世界各地にわたる多数のコレクションについては、不明の点が多く、リストの整備途上にあるという。2 SFP所蔵日本人写真作品 展示履歴を機に本格的な調査が始まった。ひとつは、1986年10月の「日本の芸術写真 1924−1932」展(photographie d’Artjaponaise 1924−1932)である。パリ写真月間の催しのひとつとして、SFPを会場に同コレクションから約40点が選ばれて展示された。いずれも後述する整理番号No.724−4の分類から選択されたものである。この年の12月から、ポンピドウー・センターの「前衛の日本」展が開幕している。同展は美術のみならず舞台、建築、写真など多分野を包括する視覚芸術の総合展である。写真部門には、日本から野島康三、中山岩太らの作品が出品されたが、SFPコレ光田由里

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