注『南画研究』第2巻第9号 池大雅特輯17,中央公論美術出版,1958年,13頁による。 箱蓋表に墨書で「便面巻玉瀾女筆」とある。外題はなく、伝来を示す資料も付属しない。季節の順に配置されないが、春、夏、秋の水辺と山中の景を十面に描く。冬景はない。『新潮世界美術辞典』新潮社,1985年,392頁の「玉瀾」の項を見てみると、その代表作として東京国立博物館蔵の便面図巻のみが挙げられている。他の玉瀾作品の解説中にこの作品を優作とするものが見受けられるが、管見の限りこの作品を論じた先行研究、掲載図版の類を見出すことができない。昭和10年(1935)に東京帝室博物館の所蔵となってから、同館内で幾度か展示されていたことが分かる。昭和10年3月中、昭和11年3月中、昭和14年6月中、9月中、昭和17年7月から8月中。『日本美術年鑑』の記載による。■リンデン民族学博物館所蔵の扇面画帖については、『海外所在日本美術品調査報告』10リン■i:①東京国立博物館蔵本第4図、②リンデン民俗学博物館蔵本第6図、③渓流岩松図(『江戸■『古美術』第44号,三彩社,1974年,13頁に、現リンデン民族学博物館所蔵、扇面画帖全十面のうちの一面(第1図)が原色版で掲載される。画面中央に水上の東屋にて梅花を愛でる人物を正面から描く。建物と人物の描写は明らかに東京国立博物館蔵本の方が優れているようだが、白い点描によって表された梅を比較してみると、東京国立博物館蔵本では枝を覆い隠すかのようにやや過剰に彩色が施されていることに気がつく。■『八種画譜』美乃美,1978年より『古今画譜』による。国立公文書館内閣文庫、紅葉山文庫本■人見勇一「玉瀾」『南画研究』第2巻第9号池大雅特輯17,中央公論美術出版,1958年,4頁,10〜11頁。池玉瀾筆、漁楽図(三浦竹泉氏蔵)と『大雅堂画法』雪−第15図(漁楽)との関連についても指摘される。■画法の原本4図が知られる。No.は『池大雅画譜』中央公論美術出版,1957〜59年による。No.627(月−23、山関)、628(花−9、石崖)、629(月−16、正面冬嶺)、630(月−10、宋人大壑)。この4図からすれば、『大雅堂画法』が原本に基づいてよく写していることが伺える。『大雅堂画法』については、相見香雨「大雅の画譜(二)」『南画研究』第2巻第1号 池大雅花卉山水図屏風(個人蔵、2005年に静岡県立美術館「若冲と京の画家たち」展で展示)のうち山水図第一扇は、『大雅堂画法』の雪−第18図(柳陰呼渡)からの引用が指摘される。星野鈴「池玉瀾筆墨梅図、同山水図」『國華』第998号,國華社,1977年,38頁による。『大雅堂画法』の柳の線を短く捉えて描き起こして、葉の先端に調子をつけて仕上げているようであり、手を挙げる人物と舟を漕ぐ人物の表現も『大雅堂画法』の内容に基づく。『大雅堂画法』から出発していると思われる点で東博本〔図2〕とは制作過程が異なるものと思われる。『若冲と京の画家たち』収蔵品図録,静岡県立美術館,2005年,図21、『古美術』44号,三彩社,1974年,22頁に図版掲載。星野氏は、同論考で山水図第二扇についても『大雅堂画法』雪−第16図(柳―217―ii:①東京国立博物館蔵本第3図、②リンデン民俗学博物館蔵本第8図、③山水図扇面(『海外所在日本美術品調査報告』1ニューヨーク メトロポリタン美術館 絵画・彫刻,古文化財科学研究会,1991年)図314、④秋景山水図(扇)(『古美術』第75号,三彩新社,1985年)16頁、太田記念美術館所蔵。太田記念美術館学芸員奥田敦子氏の御教示による。デン民族学博物館 絵画・彫刻,古文化財科学研究会,2002年,図45による。の閨秀画家展』図録,板橋区立美術館,1991年)図5の影印本。明・天啓期(1621〜27年)刊。特輯9,中央公論美術出版,1958年,6〜8頁に詳しい。
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