鹿島美術研究 年報第23号別冊(2006)
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―224―武人形の図像は銘文から王であることがわかり、天人形は同じく王や婆羅門を、胡人は商人をあらわすというように記号的に作用している。こうした誓願図の特徴を踏まえて、各画面の主題を説明する必要最低限の要素を基準に誓願図の画面にどのようなヴァリエーションがあるのか、以下に分類を試みた。この分類は純粋に図様から行ったものであって、主題の別を示すものではない。なお、括弧内に誓願図の描かれる窟の窟番号、本尊からみて左壁あるいは右壁の正壁側(奥)から何番目に位置するかを示した。第15窟と第20窟に限っては、グリュンヴェーデルがふった主題番号をあげている。武人形を主とする図1)武人形による傘蓋供養の図・・・10図(15−②、15−⑧、20−②、20−⑤〔図2〕、22−左3、24−左2(注10)、31−左6?(注11)、37−右3、42−右3、48−右2)仏の向く側に合掌して跪く武人形、反対側に傘をもって立つ武人形を配する。うち5図では画面上部に建築が描き込まれる。第20窟と第22窟には、ほぼ同様の図が2図描かれる。2)武人形の出家の図・・・9図(22−右2、24−左1、24−右2、31−左3、31−右5、38右−2、15−⑨、20−③〔図3〕、37−右2)比丘に剃髪される武人形を仏の向く側に配するものが6図確認できる。そのうち反対側が現存している2図(22−右2、38−右2)では、いずれも合掌する武人形を描くが、グリュンヴェーデルの記述からこの位置に天人形を配する例(31−左3)も知られる。また、仏の向くのと反対側に剃髪の図像、その反対側に跪いて合掌する武人形を描く、逆転構図ともいうべき例が3図ある(15−⑨、20−③、37−右2)。3)武人形によるストゥーパ供養の図・・・8図(15−①、20−④〔図4〕、31−左4、22−左1、33−左5、37−左1、42−左1、48−左1)仏の向く側に、跪いて両手で後方のストゥーパを指し示す武人形を描き、反対側に供物皿をもって立つ武人形が配される。一図を除いてはみな上部に建築物を描く。4)武人形による灯明供養の図・・・4図(15−③、20−⑨、31−左2、33−左3)仏の向く側に跪いて灯明(燭台)を持つ武人、反対側にやはり灯明をもって跪く比丘形を描く。

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