鹿島美術研究 年報第23号別冊(2006)
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注岩田秀行「『見立絵』に関する疑問」『新典社研究叢書60江戸文学研究』新典社、1993年。浅野秀剛「『見立』と『やつし』――イメージの旅」『浮世絵を読む1 春信』朝日新聞社、1998年。同「風流の造形、なぞらえる操作――『見立』と『やつし』とその周辺」『講座日本美術史 第3巻 図像の意味』東京大学出版会、2005年。 鈴木廣之「類似の発見――室町の〈擬〉、江戸の〈見立て〉」『日本の美学』24号、1996年は、■この概念については、Norman Bryson, Word and Image : French Painting of the Ancien Régime,Cambridge University Press, 1981, chap. 1“Discourse, figure” pp.1−28を参考にした。日本語訳は、ノーマン・ブライソン(佐藤康宏訳)「言説、形象――『言葉とイメージ』第一章」『美術史論叢』16号、1999年。この概念の用法については、馬渕美帆「絵巻の風俗表現と風俗画――言説と形象の視点から――」『美術史論叢』17号、2001年参照。■山根有三《湯女図》解説『図説日本の古典15井原西鶴』集英社、1978年。同「遊楽風俗図概観――野外遊楽図を中心に――」『近世風俗図譜2 遊楽』小学館、1983年。佐藤康宏『絵は語る11湯女図――視線のドラマ』平凡社、1993年。以下の議論は特に最後のものに基づく。■より正確には、明示的意味が「湯女」であるところの言説の暗示的意味、ということになる。■奥平俊六「彦根屏風について――〈鏡像関係〉と〈画中画〉の問題を中心に――」『美術史』109号、1980年。同「『彦根屏風』――屏風劇の演出――」『近世風俗図譜6 遊里』小学館、1982年。藤崎由紀「『彦根屏風』の主題に関する一考察――謡曲『芭蕉』をめぐって」『古美術』102号、1992年。佐藤康宏「肉筆浮世絵がなくしたもの――彦根屏風小論」『肉筆浮世絵大観10千葉市美術館』講談社、1995年。奥平俊六『絵は語る10彦根屏風――無言劇の演出』平凡社、1996年。■奥平氏前掲書。また、佐藤氏前掲論文も参照。■佐藤氏前掲論文参照。奥平俊六「縁先の美人――寛文美人図の一姿型をめぐって」『日本絵画史の研究』吉川弘文館、「江口君図」全般については、石田佳也「『見立江口図』試論――謡曲の絵画化をめぐって――」『サントリー美術館論集』5号、1994年参照。また、以下では本図が当世風俗の遊女を描くことは措き、江口君本人を描くものとして論じる。―39―なっている。やはり維摩のかたちを借りる、狩野探幽筆《石川丈山像》(詩仙堂蔵)などの肖像画も含めて、1の極を示し、それを効果的に用いる例が多いことは、近世初期絵画の一つの特徴といえよう。この特徴は、特定の知識や趣味を共有する鑑賞者を含む制作の場の問題と絡めて考察する必要があるだろう。また、中世と近世の違いを考える場合でも、文清筆《維摩居士像》のような例は、肖像画ゆえの営為であるという要素も強いため、室町時代に特徴的な現象である等と即断はできない。このようにすぐに答えを出すことのできる問題ではないが、この問題を今後の長期的な課題として考察し続けたいと考えている。1989年。同氏前掲書。室町時代のこうした例と江戸時代のそれとを共に論じており、示唆に富んでいる。

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