鹿島美術研究 年報第23号別冊(2006)
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―534―〔図5〕。そして日本で作られた朝鮮式陶磁器がヨーロッパへの輸出したのは結果的に朝鮮前期白磁の形が日本をへり、最終的にヨーロッパに移動するいわゆる朝鮮前期白磁の拡大の過程といえる。2)皿朝鮮前期の皿は縁の皿と小形皿に分けられる。縁の皿は口部と器の内部が平平で、高台は簡略な輪形である。縁の皿の大部分は高台の下に沙をおいて焼く。内部には重れて焼いた痕迹はない。小形の皿は日常容器として使用し、韓国京畿道あるいは南西部地域でおもに重れてやいた例が多い。(1)縁の皿朝鮮前期の白磁の縁の皿は14世紀、高麗の象嵌青磁からみられる器形で、京畿道、道馬里・牛山里窯址などでみることができる。形の特徴として、皿の口部が平平で、取りやすく、器の内部には文字文あるいは唐草文をコバルトで施している。縁の皿は中国の宋代にはみることができないが、元代になると、金属器及び陶磁器にある程度みることができ、代表的なものとして韓国、全羅南道の新安海底から出土された青白磁の縁の皿がある〔図4〕。そして元代の白磁の縁の皿の器形の原形は14世紀の前半の金属器であることが明らかになった。こうした元代の金属器と白磁で原形をさぐることができる縁の皿は京畿道窯址の他、全羅南道・慶尚南道の白磁窯址で確認することができる。朝鮮前期白磁の縁の皿は形が元代の皿より、半径が少し大きく、高台は底く、逆三角形で精巧に作られたそしてこれらとほぼ同じな縁の皿が佐賀県、有田市の天神森窯址と福岡の博多遺跡で確認することができ、朝鮮前期白磁の縁の皿が日本西部地域に所在する有田窯址群で生産された縁の皿の原形になっていることが分る〔図6〕。(2)小型皿中国では小ない小型皿は実用的な器形で、韓国、京畿道・全羅道・慶尚道地域でおもに作られた。口径12−13cmで、良質や粗質のものがある。良質は京畿道で生産され、重ね焼きはしない。粗質は全羅道、慶尚道地域で製作され、胎土目あるいは沙がおかれて焼かれた〔図7〕。このような小型皿は日本の有田をはじめ、伊万里、唐津などの朝鮮系窯址で生産さ

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