鹿島美術研究 年報第23号別冊(2006)
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国際会議出席)国際歴史学会第20回大会―573―また、多くの参加者、発表者からこの成果の刊行を期待されたため、実行委員会としては、その方向で準備を始めたところである。期   間:2005年7月3日〜9日(7日間)場   所:オーストラリア(シドニー)、ニュー・サウス・ウェールズ大学報 告 者:目白大学人間社会学部  小 林 頼 子海外における研究活動状況このたび、貴財団より助成を賜り、20thInternational Congress of Historical Sciences(第20回国際歴史学会)に出席いたしました。開催期間は2005年7月3日−7月9日、開催場所はシドニーのニュー・サウス・ウェールズ大学です。3つの主要テーマで6つ、サブ・テーマで26、ラウンド・テーブルで20、合計52の会議が組織され、歴史、民族、近代化、文化、ジェンダーの問題が討議されました。また、ユネスコ主催の6つのセッション(各文化・民族間の対話が主要テーマ)、さらにはオーストラリア歴史学界、女性史研究国際会議、歴史教育学会など、関連学会の会議も同じ場所で同時開催されました。世界各地から集まった研究者は総計で2000人ほど、発表者の数400人を上回る大規模な国際会議でした。学会全体が今回の会議でとりわけ問題としていたのは、グローバル化が急速に進むなかで、西に偏っていた視線を東西の相互的な視点へとシフトしたとき、歴史記述はどう変わるのか、政権の変動、民族の移動が顕著な地域において、歴史の主体を形成するコレクティブ・アイデンティティ、コレクティブ・メモリーとはどのようなものか、そのようななかでグローバル・ヒストリーはありうるのか、といった点でした。ポスト・コロニアル時代に意識化され、浮上し、しかし解決できぬまま人類が必然的に抱え込むことになった諸問題に、歴史家はどのような概念を見出し、実りある解決策を提示できるか、そうした問いに真摯に向かい合う学会であったと痛感しています。私が参加したラウンド・テーブル19も、上に挙げた諸点から導かれたテーマを討議

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