―576―代性をめぐって』、ラウンド・テーブル15『歴史と美術館・博物館』、国際歴史教育学会の分科会『歴史授業における他者へのまなざし』を聴講する機会を得ました。どの会議でも、人・物の移動が激しくなったグローバル時代に、マイノリティーの歴史を、誰が、誰のために、いかに語るのか、歴史の科学的記述などありうるのか、権力と歴史記述はどのように関係するのか、西洋文化流入の中でいやおうなく西欧化・近代化されたアジア・アフリカ諸国はいかにアイデンティティを回復していくのか、長い伝統を持つにもかかわらず記録された過去を持たない民族や部族、近代を自らの主体的に経験せずポスト・コロニアル時代を迎えた民族や部族に、近代化をいち早く成し遂げた西欧世界は、一体、なにができるのか、といった論点に関心が集まりました。美術史もまた、歴史の一部である限り、その研究を通じて、グローバル時代の美術研究の方法論を模索する必要があろうと思います。今回のラウンド・テーブル19への参加、今後継続する予定の共同研究において、その方向性を諸外国の研究者とともに見出す努力を続けたいと考えています。
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