図11 長文系諸本系統図 資料1 ﹁大蛇出現︑天稚彦に姿を変える﹂テクスト比較 ︵傍線は稿者による︶ ﹇短文系テクスト﹈ くちなはのいひたりし池のまへに︑家をつくりていてゐぬ︑たゝひとりすへて︑人々かへりぬ︑ゐの時はかりなるらんとおもふほとに︑風さと吹て雨はらとして︑おき中より浪いとたかくたつやうに見ゆれは︑姫君いきたるか︑死たるかと思ひて︑おそろしさ︑せむかたなく︑あるかなきかにてゐたるに︑十七間にはゝかるほとのくちなはきて︑いふやう︑我をおそろしとおもふことなかれ︑もしかたなやもちたる︑我かしらきれ︑といへは︑おそろしさかなしけれ共つめきりかたなにて︑やすくきれぬ︑直衣きたるおとこの︑まことにうつくしきか走いてゝ︑かはをはかいまとひて︑こからひつに入て︑ふたりふしぬ︑おそろしさもわすれて︑かたらひふしぬ ︵専修大学本 第三段︶ ﹇長文系テクスト﹈ 安城市歴博本かたみとて︑かきあつめたる︑水くきの︑葉末にむすふ︑我なみたかな︵中略︶河波あらくたちて︑いなひかりして︑なる神︑しきりに︑しんとうし︑雨︑おのめもうつはかりなり︑きもたましゐも︑身にそはす︑① いといとをしき姫なれと︑名残もわすれはて︑我さきにとそ︑かへりける ︵安城市歴博本 上巻第四段 末尾︶ 其後︑河のおもて︑いなひかりして︑波のうちより︑たて十てうはかりなる︑くちなは︑すこしもためらはす︑君の御前に︑かうへを︑うなたれける︑︵中略︶わかかしらを︑たちてみ給へ︑とあれ③ は︑君︑たちより︑まほりかたなを︑とり出し︑かしらをわりて見給へは︑いきやうくんし︑いくはんたゝしき︑雲の上人︑ひとり出給ふ︵後略︶ 個人蔵本一世たに︑ちきりもはてぬ︑たらちねの︑なみたのたねに︑さきたつそうき︵中略︶川浪しきりにたつて︑さやか① なる月にはかにかきくもり︑神なりさはき︑いなひかりして︑雨しやちくのことし︑ひと人︑おしき名残もうちわすれ︑われさ② きにとそかへりける︑そのゝち︑川中よりひかりひるのことくにかゝやき︑なみのうちより︑たけ十ちやうはかりなる︑大くちなはいてゝ︑御まへにかうへをうなたれ︑︵中略︶わかかうへをたちはりて︑たひたまへ︑まことのすかたを︑あらはさんと︑いひけれは︑そのとき︑ひめきみ︑まもりかたなを︑と③ りいたし︑かうへをふたつにきりたまへは︑いきやうくんして︑ひかりかゝやくと見えしか︑いくはんたゝしくしたる︑雲のうへ人︑いて給ふ︵後略︶ ︵個人蔵本 上巻第四段 終結部︶ 資料2 ﹁天に昇る天稚彦﹂テクスト比較 ︵傍線は稿者による︶ ﹇短文系テクスト﹈ この物いれたるからひつをは︑あなかしこ︑いかなりともあくな︑是たにあけたらは︑えかへりくましきそ︑とて空へのほりぬ ﹇長文系テクスト﹈ 今は︑天にのほらんと︑思ふなり︑今七日すきは︑又まいりあふへきなり︑これこそ︑わまいるとみえしか︑天にあかり給ふ ︵専修大学本 第四段︶ ︵安城市歴博本 上巻第五段︶ とふり︑神なりいなつまひら︵安城市歴博本 上巻第五段 冒頭部︶―60―v i i くくiv夜もすから︑しての山路を︑こへかてに︑うき世にのこる︑人をこひましiiiiiよひあるとたの夜しつた野るにの濃︑︑の︑尾契をや花りはなみかもにもはなとてくのぬ︑︑ねを秋た︑風らそにちよ︑ねさおのそも︑とひなみを︑たかたにるののゝ玉し︑とた露︑にのわれこて︑とそ我のさやき葉きたかつまし② をす︑れかあたけみた︑まふのこなすよ︵とて中︑略う︶つ河くのし面にき紫︑しう雲かん たらなう引と︑を天ひ人とつ︑︑おん取か出くしを︑ひかやまうへして︑︑御此むふ迎かゐ たに
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