鹿島美術研究 年報第23号別冊(2006)
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a漆技法の復元「御道具図并入目料帳」から、19世紀には、こくそ詰拾地(刻苧)→布着三辺地(下地付け)→真塗下地(中塗り)→真塗・朱塗(上塗り)というa漆工程の後に、―64―面積は「1寸角=1坪」という琉球独自の単位を用いている。3 琉球王国漆芸技法の復元と検証沈金・青貝(螺鈿)・崩薄金薄磨・堆朱塗・白檀磨・黄ふくり帰塗・掛合真塗・春景塗・黄塗下地などの技法で多様な加飾や特殊な技法が行われていたことが確認できまった技法だ。今回の同文書の分析研究で、これらのa漆工程や加飾技法などの使用材料と数量を具体的に解明することができた。「御道具図并入目料帳」には115点の漆器が掲載されている。その中から工程別に材料の数量が記載され、また、塗り面積(坪)も示されている6点の漆器を表1に掲げた。表には、使用数量を塗り坪数で割って求めた100坪(1尺四方)当り数量を示してある。表1を見ると、各漆器の100坪当り数量がほぼ完全に一致していることがわかる。これは、各漆器の使用材料の数量が、共通の歩掛りを元に計算されたことを示している。表1のアミ掛け太枠内は共通の歩掛りで計算されたと考えられる塗り工程である。特に布着〜朱塗・真塗までの工程では100坪当り数量はほぼ全ての漆器の塗り工程に共通している。この100坪当り数量が、貝摺奉行所で積算に使用していた歩掛りである。表1の2411朱塗唐台〔図2〕を例にとってa漆工程を復元してみよう。この朱塗唐台は、同治9年(1870)に島津家に進上された漆器である。製作仕様をみると、2ツの唐台で、台の机面は推定で60×150cm程度。2ツとも前面こくそ詰拾地と布着三辺地のa漆を行う。図2上の唐台の上塗りと加飾は、机面の中央部分は朱塗で縁には真塗に沈金で雲竜文を描く。脚は竜面に玉掴みで竜面と爪は金薄(金箔)磨、玉は朱塗。その他の部分は真塗、懸合真塗、黄下地に崩薄磨などの上塗りを施している。図2中は、中央部分が朱塗、他は真塗と懸合真塗である。上貝摺師の仕事量は述べ71.14人なので、唐台2ツの塗り作業は複雑な加飾も含めて約71日を要する設計だったことになる。なお、この唐台とほぼ同形の朱黒漆雲龍沈金螺鈿卓(浦添市美術館蔵)が現存するこしらえかわらじのこる。これらの技法のいくつかは、下地付けの拵瓦地粉とともに、現在では失われてし

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