鹿島美術研究 年報第24号別冊(2007)
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―146―「明治三十九年十二月 日式部職ヨリ寄贈」とあって、典式を差配する宮内省式部職和歌御屏風は、大嘗会和歌を主題として、和歌の内容をもとにやまと絵によって絵画化したもので、この屏風和歌は、斎国毎に1帖に3首ずつ、都合6帖18首からなっている。悠紀主基の両斎国から勘申された地名を主題として、1年12箇月の四季景物をとりこみ、当代一流の歌人が詠進した。そして能書がこの和歌を染筆して、その色紙形を屏風に貼り込むのである。本文御屏風は、中国典籍から瑞祥に因む文章(本文)が儒者によって選定され、唐絵によって絵画化したものである。この本文御屏風も1帖に3箇月の月次形式で、四季の構成をとり、能書が本文を記した色紙形を屏風1帖に3枚ずつ貼り込んだ。2.東京国立博物館所在の大嘗会屏風本報告の調査対象である東京国立博物館に所在する大嘗会屏風60帖のうち36帖は、「列品記載簿」(収蔵品の登録台帳)に記載されるもの(注6)である。別に24帖の大嘗会屏風の所在も確認できたが、こちらは、来歴の記録などが現在のところ見つからない。しかし先の36帖と、その大きさや保管する辛櫃などを同じくしており、相互に関連する一連のものと考えられる。「列品記載簿」によれば、作者の記述はないが、から屏風の所管が移されたと考えられるが詳細は不明である。現在、これらの屏風は展観等に供されることなく、保管されたままとなっている。屏風の保存状況を記せば、画面上の顔料に関して、ほとんど退色はなく鮮やかな色彩が残っているものが多い。しかし、虫喰跡が甚だしく認められるものや、屏風裏に黴が生じているものも多数ある。料紙に糊離れが認められるもの、蝶番部分が破損し各扇が離れてしまっているものもある。一部に良好な保存状態を示すものもあるものの、深刻な保存状態のものが多い。60帖の屏風はその大きさにより、二つに分類できた。各帖で若干の揺れはあるものの、一方は50帖あり、屏風の総寸法が縦121.5糎、横265.0糎ほど、画面寸法は料紙を縦に3枚貼り継いで画面を作り、縦110.0糎、横252.0糎ほどであった。他方は10帖を数え、総寸法が縦153.0糎、横295.0糎ほど、画面寸法は料紙を縦に4枚貼り継いで画面を作り、縦138.0糎、横281.5糎ほどであった。屏風の高さにより、これらが四尺屏風(和歌御屏風)と五尺屏風(本文御屏風)であることがわかり、色紙形に記された文章によって、歴代の大嘗会に作られた屏風であることが判明した。なお、色紙形はともに、縦20.0糎、横17.5糎ほどの共通した大きさとなっており、紅、紅梅、黄、萌黄、白、紫、縹などの色を塗り、金泥が水平に5条ほどに引かれて

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