■全体的に壁画が残る聖堂は、オシオス・ルカス（フォキス地方）、ネア・モニ（キオス島）、ダフニ（アテネ近郊）、パナギア・トン・ハルケオン（テサロニキ）、アギオス・ニコラオス・トゥ・カスニヅィとアギイ・アナルギリ（カストリア）、エピスコピとアイ＝ストラティゴス（マニ地方）、アギオス・ゲオルギオス・ディアソリティス（ナクソス島）。一部の壁画が確認されるのは、パナギア・コスモソティラ（フェレス）、アギオス・ニコラオス（セレス）、キミシス（カランバカ）、アギオス・ディミトリオス・カツリス（アルタ）、アギア・エレウサ（アカルナニア）、アギオス・ニコラオス（ハリドゥ）、パルテノン神殿とヘファイストス神殿（アテネ）、ヴルヴラの石窟聖堂（アルカディア地方）、アギオス・ソゾン（ゲラキ）、主の変容聖堂（ホルティアティス）、プロトスロニ（ナクソス島）。―15―■P. Brown, “The Rise and Function of the Holy Man in Late Antiquity,” The Journal of Roman Studies61注O. Demus, Byzantine Mosaic Decoration, New York, 1976（London, 1948）. e.g. M. Panayiotidi, “Oi toichographies tis Kryptis tou Agiou Nikolaou sta Kambia tis Voiotias,” Actesdu XVe congrès international d’études byzantines（＝CIEB XV）, II, Athens, 1981, pp. 597−622; C. L.Connor, “The Portraits of Female Saints in the Mosaics of Hosios Loukas,” in: Mairi Aspra-Vardavaki（ed.）, Lampedon: Aphieroma sti mneme tis Doulas Mouriki, vol.１, Athens, 2003, pp. 137−144; I. S.Vitaliotis, “Remarques sur l’emplacement d’un nombre de figures isolées dans le sanctuaire et le naos ducatholicon de Saint-Luc（Hosios Loukas）en Phocide,” Byzantiaka23（2003）, pp. 141−166.■主として以下の文献から、調査すべき聖堂を抽出した。J. Lafontaine-Dosogne, “L’évolution duprogramme décoratif des églises de 1071à 1261,” CIEB XV, I, Athens, 1979, pp. 287−329; D. Mouriki,“Stylistic Trends in Monumental Painting in Greece during the Eleventh and Twelfth Centuries,”Dumbarton Oaks Papers（＝DOP）34/５（1980/１）, pp. 77−124; M. Panayiotidi, “La peinturemonumentale en Grèce de la fin de l’Iconoclasme jusqu’à l’avènement des Comnènes（843−1081）,”Cahiers archéologiques（＝CA）34（1986）, pp. 75−108; K. L. Skawran, The Development of MiddleByzantine Fresco Painting in Greece, Pretoia, 1982, pp. 149−185.スト受難週の開始日や復活祭が日曜日にあること、最後の審判と救済への備え、という意味の重ね合せから、アナスタシアと共にキリアキとパラスケヴィが選択されたと推測されよう。死者の肖像に始まる聖人像は、初期には主に奉献像として聖堂に描かれ、中期にいたって定型化する聖堂装飾プログラムに取り込まれることとなる。原則として神学的・建築的位階に従いながら、時に典礼暦に、時に名前の意味の上で、寄進者や修道院の意図を反映しながら選択・配置された。その際キリスト伝図像や他聖人等と関係を結ぶよう配慮されたことは、この時代の大きな変化であると言えよう。建築が小型化した中期の聖堂に於いて、下層の聖人は観者に触れられるほどの距離に並ぶ。彼らは神学的にも実際的にも、「地上にある神の世界（注27）」へと人々を繋ぐ仲介者であった。
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