―244―(子)9点、ニコラス・ベルヘム7点、レンブラント・ファン・レイン6点を始めとグから判明している〔図2〕(注8)。だが一方、先行研究では、ラ・ロクの生涯自体に重点が置かれる傾向にあり、確かに蒐集家としての名声は言及されるものの、コレクション内容についてはヴァトーとシャルダンの作品が所蔵されたこと、そしてネーデルラント絵画愛好者であったとする漠然とした指摘に終始してきた。またシャルダンとの関係についても、主に各作品の来歴紹介の際の間欠的な言及に留まる傾向にあり、まとまった考察はなされていない(注9)。従って以下では、彼のコレクション内容の詳細な把握と、シャルダンとの関係についての考察を進めたい。まず、彼のコレクションの形成時期と手段についてであるが、確かに資料に乏しいため不明な点が多い。だが、ラ・ロクが退役の後、パリに移住して芸術に専心し始めた頃、おそらく1720年前後の頃から本格的に蒐集を開始したことは推測できる。ヴァトーが彼の肖像画を描いたのも1715年から18年にかけてのことであった。作品の入手手段としては、例えばジェルサンの書簡からは、ネーデルラント絵画のいくつかをイアサント・リゴーの競売会で購入したこと、またピエール=ジャン・マリエットによるシャルダン伝によって、1730年代から40年代にかけて画家に数回制作依頼したことなどが部分的に判明している(注10)。また、具体的資料はないものの、ヴァトーとも共通の友人で、ネーデルラント絵画の売買を盛んに行っていたジェルサンとの「数年来の」親交を通じてその知識や助言が、少なからず蒐集に反映された可能性がある(注11)。以上のことから、少なくとも彼が制作依頼と競売会への参加を通じてコレクションを形成したことがわかる。次にカタログに記載された蒐集内容であるが、絵画(209)、素描(47)、版画(115)、ブロンズ(30)、焼物(24)の他、陶磁器や貝殻も多数所有されている。絵画については、1つの番号に複数がまとめて整理される場合があったため、実際には279点の作品が所蔵されていた。ジェルサンによる同定に基づくならば、絵画の内訳は、イタリア派23点、ネーデルラント派140点、フランス派52点、不明37点となっており、数字の上から直截に判断しても明らかにネーデルラント絵画の蒐集に重点が置かれていることがわかる(注12)。ここにすべてを列挙する余裕はないが、イタリア派については、パオロ・ヴェロネーゼらによる宗教画や神話画が数点含まれている一方、ネーデルラント派では、フィリップ・ワウウェルマンス9点、ダーフィット・テニールスして、風景画と風俗画がかなり多数を占めて大きな特徴を示している。次にフランス派を見るならば、シャルダン10点、セバスティアン・ブールドン4点、パローセル一族4点、ヴァトー3点が目立つ。フランス派は、主題ごとに見ると平均的に所蔵され
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