外国人研究者招致)聖なるイメージー彼岸とのコミュニケ−ションの手段として―530―間を飾る主人のもてなしには思いやりを感じる。今回 鹿島美術財団の助成を得てシルクロードの重要な拠点であるトルコにおける国際会議で発表の場が与えられたことにより、私は思いやりとともに繊細な感性を持つ日本人を誇りに思い、これからも古典織物を復元することで日本人の美意識を後世に残したいという思いを再認識した。期 間:2006年12月10日〜18日招致研究者:フィレンツェ、ドイツ美術史研究所長ゲアハルト・ヴォルフ(GerhardWolf)報 告 者:東京大学大学院人文社会系研究科 助教授 秋 山 聰ゲアハルト・ヴォルフ氏は当初の予定通り12月10日に来日された。当日は東京大学でのシンポジウムおよび氏の滞在に関する打合せを申請者と2時間ほど行った。翌11日に京都に向かわれ、12日京都造形芸術大学比較芸術学センターにおいて「真のイメージ―ビザンティウムから西方までのキリストの顔」と題された講演をイタリア語で行われた。この講演において氏は、キリストの「真の像」探求の歴史が、従来の美術史学の方法論だけでは捉えがたいキリストの表象(不)可能性というイメージの本質に関わる根源的な問いを提起する点に着目し、近著『布と鏡Schleier und Spiegel』での成果を活用しながら論じられた。なお、通訳は同大学助教授水野千依氏がつとめられた。当日は関西地方の美術史関係者を中心として聴衆は優に80名を超え、熱心な質疑が行われたという。なお、ヴォルフ氏は、京都滞在中にキリスト教と比較可能な類の宗教実践を行う寺社や茨木市におけるかくれキリシタン美術の調査見学を行われた。14日に東京に戻られた後、15日午前中に東京国立博物館においてキリシタン美術関連作品の特別観覧を行った。中でも、銅板油彩画「雪のサンタマリア」断片および掛幅『三聖人像』に強い関心を示された上に、幾つかの重要な指摘をされ、今後の研究課題を見出されていた。加えて木版嵌込金属牌型踏絵やメダイも仔細に調査された。午後東京大学においてシンポジウムについての最終打合せを行った後に、東京大学総合図書館においてキリシタン美術の名品『救世主像』の観覧を行った。本作について
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