鹿島美術研究 年報第24号別冊(2007)
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―66―く(傍線部、囲部は筆者・漢文は書き下し、和文は読み下し)叭々鳥漢文「叭々鳥。本名A!。又ノ名ヲ八哥。或ハ寒皐ト名ス。首身倶ニ黒色。頭上ニB毛有。詳ハ本草四十九巻ヲ見ヨ。」和文「叭々鳥。本名A!又は八哥又寒皐といふ。此鳥は一身皆黒し。頭のうへにときん有状烏に似て大さはひよどりほどある也。」猩々鸚哥漢文「猩々鸚哥。是亦本草所謂紅鸚鵡也。猩々鸚哥和俗之所名也。其状喙赤而光有。翅末緑色。全体紅色也。」和文「猩々鸚哥。漢名これも又紅おうむ也。和俗に猩々いんこといふ。其かたち喙あかひかりあり。全体紅色也。羽さきるりいろ也。」青鸚哥漢文「青鸚哥。是亦和俗ノ所名也。漢名緑鸚鵡。其上喙淡黄下喙則淡黒。目ノ郭黄而脚ニ灰白黒ノ小点有。両翼ノ下ニ各紅而光有。全体緑色也。」和文「青鸚哥。漢名緑あふむなり。其形上のくちばしねずみ色なり。目のはた黄色。足に黒き星あり。羽の下紅にしてといふ也。」本書に記載される十羽全てに漢文と和文の解説及び挿図があり、前半の五羽の漢文の解説には「本草四十九巻」あるいは「本草」と記さる。これは明時代に李時珍が著した『本草綱目』四十九巻禽部(注5)を示すことは明らかである。残りの五羽の漢文の解説には『本草綱目』を示す記述はなく、さらに和文の解説には『本草綱目』を示す言葉はまったく記されていない。これは漢文を読める人物と読めない人物とに伝える情報を差別化していると言える。『奇観名話』に挙げられる鸚哥は、『本草綱目』ひかりあり。全体はみどり色なり。和俗に青いんこ

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