鹿島美術研究 年報第25号別冊(2008)
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―150―えたのである〔表1〕。一方、唐代の作例である西安宝慶寺旧蔵石龕のうち立像の光背高も像高の4分の1の高さをプラスした数値であった〔表2〕。さらに坐像の場合では、像高を1とした場合の光背高が1.5、つまり像高の2分の1をプラスした高さが光背高であった可能性(注6)を指摘したのである。8世紀頃のわが国において、最先端の技術とデザインでもって仏像制作をしていたのは官営造仏所である。遣唐使を通じてもたらされた中国唐代の仏像制作における技術やデザインは、まず官営造仏所で消化されてから作品に反映された。こうした経緯は、仏像の様式やそこにあらわれた文様の比較など従来の研究によって多角的に理解されてきた。したがって、わが国や中国だけでなく朝鮮半島も含めて8世紀前後に制作された仏像に共通する数値を求めれば、仏像制作における黄金比率のごとき規範が明らかになると思われる。2 計測の方法本研究では前述の規範を求めるために様々な作例の数値をまとめたが、まず、この数値の信頼性について述べておきたい。像高に対する光背高の比率を計算するには実測に基づく法量を用いるのが前提であるが、仏像の法量の計測は対象が立体であるために計測者によって数値が一致しないことがままある。それだけでなく、実測がかなわない場合には画像処理による計測をせねばならない。画像処理による計測は第三者による再現が可能であることを前提に、PCにとりこんだ画像を用いて以下のような方法で行なった。①作例各部分の法量を出来る限り収集し、法量から描画ソフトで直線的にアウトラインを製図する。②製図画面に正面や側面等から撮影した作例の画像を配置し、ゆがみの検出や撮影位置の推測をする。③写真のゆがみを解消することを目的として画像処理を行ない、求めたい数値を計測する。写真計測における誤差はじゅうぶん承知しているが、本研究で扱う数値はあくまで像高に対する光背高の割合である。画像処理後の法量と実測データを比較した結果、データが像高のみ、像高が3メートルを超え、画像が正面1枚しかない場合でも、誤差は計測数値のほぼ5パーセント以下とみられる。また作例が小さければ写真のゆがみも小さくなるため、今回小金銅仏も画像処理対象に加えた。なお、昨今3次元計測による記録が行なわれるようになっている。肥田路美氏の研

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