■個人蔵笈構造―高76.0cm、幅61.5cm、奥行31.5cm、木造の箱笈、構造は通常の金銅装笈である。金銅板の装飾形式は①金銅装式である。本作は前面の部分を除き、残りの躯体部は新■秋田・圓浄寺笈〔図４〕構造―高73.5cm、幅60.3cm、奥行32.0cm、木造の箱笈、構造は通常の金銅装笈である。金銅板の装飾は①金銅装式である。板の表面は漆塗り仕上げであるが、前面、天井面、―314―形跡もあるが、金具は当初のものであろう。しく補ったものである。図様―第一区は山岳を背景にして、中央に雨宝童子が立つ。その両脇には天人が二人向かい合うように飛来する様を表す。第二区は中央に三鈷杵、その両脇に団円形金具を付ける。第三区は主要モチーフを表さないが、左右の扉の中央に輪宝形の金具を付す。扉は花菱形の蝶番で留め、両端には八双金具を装着している。第四区の中央には円形の金銅板を留める。ここには波を背景にして、岩座上に邪鬼を踏んで立つ毘沙門天像を表している〔図３〕。その両脇には第三区と同じ輪宝形金具をつけ、花菱形金具および八双金具を装着している。第五区の中央には貝のモチーフを表す。所見―躯体部はほぼ新しく作られたもので、正面の金具も一部新しく補われたものが混在していると思われる。しかし第四区の毘沙門天像を線刻した円形金具は珍しく、注目すべき作例と思われる。柱などは黒漆塗とし、背面・側面の板は透漆塗とする。側面上部には海老虹梁を模したモチーフを表す。床板、帖木一枚、側面の一部、脚の一部などを欠失する。図様―第一区は向かい合う奏楽の天人を表す。第二区には三鈷杵形の金銅板を貼り、団円形金具の向かって左側は三日月形であり、日月を表現する。第三区の観音開きの扉には、左右それぞれ盤上に火炎宝珠を表した金銅板が装着されている〔図５〕。小脇板には昇降龍を配する。扉を留める蝶番は、上は菊を、下は枇杷を表す。第四区の慳貪板には、盤上に盛られた六個の柑子を表す〔図６〕。両脇には花菱形の金具と、八双金具を付ける。第五区には中央に巻貝と唐草文様を切り透かした金銅板を貼る。一つだけ残る帖木には三鈷鈴を表している。所見―第二区・第三区は火炎宝珠と柑子を盤に盛った意匠で、他にあまり類例のない珍しい図様の作例である。宝珠や柑子、龍の体部は銅版の裏面から叩いて立体感を出している。切り抜いた金銅板の図様も大らかさを感じさせ、かつ、図様のバランスが
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