第11窟は東南に面し、西北を正壁とする。地面から高さ約4mのところにあり、南西壁のみ下から辛うじて見ることができる。西北壁中央には降魔印の如来坐像、左右第12窟は門口の左右に舎利塔を造り、各塔内の龕に三尊像を浮き彫りする。内部北壁は中央に如来坐像、左右に羅漢像を配し、現在は如来坐像の胸から腹あたりを残す―24―の下半分を残すのみで、あとは剥ぎ取られている。第7窟は、窟内旧状の写真が紹介されておらず、当初の像容を知ることができない。(第11窟)に羅漢像、北東壁は如来倚像と菩薩立像、南西壁には転宝輪印を結ぶ如来坐像と菩薩立像があったが、現在は失われているらしい。旧状の写真では、南西壁の如来坐像の体躯は量感豊かで、衣文線にも写実性が見られるが〔図5〕、旧山中コレクションとして収蔵されたという頭部は、重々しい表情、波状に結いあげた単調な頭髪の表現であるため、像容の見当がつきにくい。(第12窟)以外、両羅漢像も含め削り取られている。東壁は中央に如来倚像、左右に菩薩立像を、西壁も中央に如来坐像、左右に菩薩立像を置くが、いずれも中央の如来像の一部を残すのみで全て削り取られている。北壁の旧状の写真を見ると、中央如来坐像の面貌はふっくらとした頬、吊り上がった細い眼、小さな口元が印象的である。衣文線など比較的滑らかではあるが、体躯の表現は繊細さに欠ける。(第13窟)尖拱形の小仏龕内の中央に如来坐像、左右に菩薩立像を彫る。龕の周囲には、追刻らしい、さらに小さな仏龕が幾つかある。現在如来坐像は頭部と右腕を欠失、左菩薩立像は剥ぎ取られ、右菩薩立像は下半身のみを残す。(第14窟)内部は円形で、比較的大きな窟である。北壁中央には如来倚像、左右に菩薩立像を配する。如来倚像は首から膝辺りを原所在地に残し、頭部を米国ワズワース・アシニアム美術館が収蔵する。細かな波状の頭髪、見開いた眼に通った鼻筋など、引き締まった面貌である。東壁は、右に菩薩半跏像、左に菩薩立像を配するが、菩薩半跏像は頭部を欠失、胸から腹、大腿部あたりが残存し、左の菩薩立像は削り取られている。西壁も東壁と対応し、左に菩薩半跏像、右に菩薩立像を配する。左の菩薩半跏像は、現在頭体部ともに東京国立博物館に所蔵、原所在地には裳の懸かった台座と右側天衣の一部を残す。なお、第14窟は旧状の写真および散在する諸像の所蔵先も比較的明らかなものが多く、像容を知りやすい。全体的に、写実性に溢れた抑揚のある肉体表現
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