鹿島美術研究 年報第25号別冊(2008)
383/499

―373―をだのが山下、秋尾、神中で、大鳥、山室、川路は基礎的科目の学習で終わっている。油絵作品が現存するのも、先の三人の中の山下りん、神中糸子である。「画学生進歩表」にある学習項目からすると、教育課程は以下のような系で構成されていたと思われる。コロン以下は実際の進歩表中の項目である。基礎科目:幾何学、遠近法、飾画、論理影法、解剖学模写  :風景人物初歩、風景人物上等、風景人物油画写生  :石膏写生、風景写生、風景人物油画写生模写に分類した項目は模写と明記されていないが、筆者が写生に分類した項目は写生と明記されているので手本模写と見るのが妥当であろう。工部美術学校の明治11年度は混乱をきわめたせいか、進歩表が残されていない。明治10年度(明治10年7月〜11年6月)と12年度(明治12年7月〜13年6月)のそれからすると、秋尾園は幾何学、遠近法、飾画、論理影法、風景人物初歩が明治10年度で終わり、石膏写生、風景写生は明治10年度に履修中、風景人物上等は明治10年度、12年度履修中であった。進歩表と資料に付された年記はほぼ対応する。一面ずつの調査結果は紙幅の関係で示せないため、資料中の幾何学、遠近法、飾画、風景人物初歩・上等、風景写生の年記をまとめて挙げる。本資料中ではなく、他の所蔵者の判明している年記入り作品〔〕で示した。資料の大部分は月日のみの記載なので、月日記とすべきであろうが、慣例で年記とする。年は、いくつかの曜日併記をインターネット上にあるたくさんの曜日検索サイトを参照すると、明治10年の曜日であったと確認できる。幾何学(初歩):1.明治10年4月20日 2,3.は年記なし幾何学:〔No.〕7.〜24面:(明治10年9月)6日〜10月15日遠近法:計8面 明治10年9〜10月 3面 明治11年1月飾画: 第7〜35図 明治10年9月7日〜10月15日風景素描写生明治12年7月15日、〔10月10日〕〔10月11日〕風景素描模写明治12年10月26日、明治13年1月15日明治13年8月20日、〔明治13年9月9日〕履修年度と課題内容との確認のため主として年記入り資料を挙げた。明治9年度明治10年度明治10年度明治10年度明治12年度明治12年度明治13年度以上のように、明治9年度の課題が一つあるが、多数を占めるのは明治10年度の課題である。もちろん、年記のない写生素描、模写素描も多数含まれているが、今回は

元のページ  ../index.html#383

このブックを見る