注辻惟雄氏「伊藤若冲筆三十六歌仙図屏風」『國華』一〇〇七号 1977年 狩野博幸氏『若冲』紫紅社 1993年■松島仁氏「伊藤若冲筆 三十六歌仙図押絵貼屏風」『國華清話会会報』八号 2006年■愛知県美術館「木村定三コレクションの江戸絵画」展カタログ 六歌仙図解説 2006年■狩野博幸氏 京都国立博物館「若冲」展カタログ 三十六歌仙図押絵貼屏風解説 2000年■辻惟雄氏「Ⅳ 若冲派」(『若冲』所収 美術出版社)1974年■小林忠氏「晩年期若冲の作品―水墨略画を中心として―」『國華』九四四号 1972年■このうち大岡春卜との関わりについては拙稿にて述べた。「若冲画と大岡春卜の画譜―版本学京都国立博物館「蒔絵 漆黒と黄金の日本美」展カタログ 忍恋蒔絵硯箱解説 1995年―413―禅僧や知識人たちとの関わりから、これまで若冲作品と仏教教典や漢詩との繋がりに関する論は多くなされてきた。しかし、和歌や世俗の文学などとの関連についてはほとんど言及がなく、まだまだ考察の余地があると思われる。写生の画家とされ、鶏をはじめとする花鳥画を得意とした若冲の作品群の中で、人物画は数が少ない。さらに道釈以外の人物画となれば、極めて稀な部類に入る。そんな若冲の制作した歌仙図がただ歌仙の形を借りた戯画にとどまらず、和歌や風俗図絵などの知識を要する謎解きの趣向を凝らした物であったならば、若冲の制作背景や作画態度を新たな側面から見直す契機となるのではないだろうか。このような歌仙図を発注し、若冲の意図を理解して楽しんだであろう注文者や鑑賞された場などの問題を含め、今後さらに考察していきたい。付記:今回の調査研究に際しては太田記念美術館の日野原健司氏、國華社の山本ゆかり氏が上方絵本の図版収集にご協力くださったほか、江戸風俗についてのご助言を頂きました。さらに、近世の歌仙絵については國華社の松島仁氏にご教示を頂きました。深く感謝の意を表します。習と「物に即する絵画―」『美術史』第百六十一冊 2006年
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