―484―③ 日本三景とスペイン19世紀風景画の比較研究Cultural Globalization” として、文化のグローバル化の諸問題に焦点を当てている。文の視点を韓国美の問題に援用し、現代美術にみられる伝統的な韓国美学、つまり素朴美と単純美の実際を、金煥基、李禹煥、金昌烈の作品を例に確証しようとし、また芸術作品のみならず、むしろ生活用品・技術製品といったデザインの世界でも韓国の伝統美である素朴美がひろく見られることを論じる。閔教授の研究報告は、2月11日のシンポジウム「ITグローバリズムの時代における〈技〉の再考」(“Reconsider the manual skill at the time of IT globalization”)におけるパネリストとして、提題用基調報告であった。表題を“Circumstances and Prospects of化のグローバル化は今日の時代の趨勢であり、世界中で文化が同質化するという傾向をみせている。そうした事態は、しかし文化帝国主義ともみなされ、またメディア帝国主義という側面もある。世界文化という統合化への方向については、世界の平和と安定と人類共通の生活様式の創出といった楽観論もある。世界文化が成立するとすれば、その基盤はビジネス原理による、あるいは選良や自覚的先進的人々によるエリート文化として、あるいはまた大衆文化の共通基盤として、さらに東アジア・中南米・南アフリカなどにおける福音的プロテスタンティズムの拡大によって、などである。他方、先進的ないし支配的文化をどう受容するか、文化間の相互浸透によって統合した新種文化の成立、多文化主義や正統的民族文化に関する議論についても閔報告は言及する。文化統合は肯定面を多々持ちつつ、一方で文化的アイデンティティの喪失の危機や伝統文化の退嬰、商業主義の先行と文化の平板化、文化間の軋轢、社会的混乱などを招くだろうし、現に種々の問題が起きていることを閔教授は指摘する。以上の両教授の研究報告論文の全文は、近日中に公刊予定の大会公式報告書に掲載の予定である。財団注:紙面の都合上、筆者のご了解を得て割愛させていただきました。期 間:2008年4月15日〜29日招致研究者:スペイン、マドリード・コンプルテンセ大学地理・歴史学部 教授ピラール・カバーニャス・モレーノ(Pilar Caba˘nas Moreno)報 告 者:スペイン・ラテンアメリカ美術史研究会 代表
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