―485―ムJaponismo en España」というテーマを設定し、そこでピラール・カバーニャス教授響La influencia del arte japonés en las obras de Anglada Camarasa」は、日本ではほとんど知られていないものの、20世紀のスペイン美術史には欠かすことのできない画家であるアングラーダ・カマラサの生涯を概略したあと、その画業の根底には日本美術から東北芸術工科大学 芸術学部 准教授 安 發 和 彰今回の招聘の成果として、なによりもまずピラール・カバーニャス・モレーノ教授に行っていただいた、ふたつの講演の成功を挙げなければならない。まず、我々、スペイン・ラテンアメリカ美術史研究会は4月19日にセルバンテス文化センターで総会を行った。総会全体のテーマとして「スペインにおけるジャポニスに講演いただいた。そのときの講演「アングラーダ・カマラサにおける日本美術の影強く影響を受けていたことを作品そのものだけでなく資料のうえからも確認するものであった。しかも、そうした影響は外見的な特徴の類似があった、つまり、アングラーダ・カマラサが日本美術を模倣して「ジャポニスム絵画」を描いたということでは決してなく、日本美術から学んだ豊かな造形手段が画家の個性を発揮する手段となっていったのだという指摘は、スペインにまで波及した「ジャポニスム」が単なる模倣からさらに一歩先に進んだものとなったことを示す重要なものである。また総会全体として、昭和女子大学木下亮教授の講演「19世紀後半のカタルーニャ美術の『日本』La imagen de “Japón” en el arte catalán de la segunda mitad del siglo XIX」、早稲田大学セルヒオ・ナバーロ講師の講演「19・20世紀のスペインと日本美術Recepción del arte japonés en España en los siglo XIX y XX」とともに、これまでほとんど論じられることのなかったものの、スペインにもジャポニスムの波が断片的ながら確実に伝わっていたことが明白となった。19世紀後半、とくにフランスとの関係が深いカタルーニャでバルセローナ万博(1888年)やパリに滞在経験をもつ芸術家(フレデリック・マスリエラ・マノベンスやマリアノ・フォルトゥーニを筆頭に)、日本美術品を扱う美術商を通して日本美術が紹介され、美術作品にも反映されていく。こうした知見は、19世紀から20世紀の初頭にかけてのスペイン美術の流れのなかで日本、あるいは「ジャポニスム」が如何なる意味をもったのか、再考を促すものとなるだろう。また、この総会は人的交流という観点から見ても、研究者間の交流に大きく資することとなった。研究会会員のみならず、2001年にマドリードで開催された「仏教 日本版画」展で既にカバーニャス教授の知遇を得ていた町田市立国際版画美術館学芸員
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