―57―三、花鳥における四季「四季花鳥図」の主題は四季折々の花と鳥である。季節ごとに花鳥を描くものであるのと同時に、花鳥によって季節をあらわすものでもある。第三節では呂紀「四季花鳥図」四幅それぞれについて、どのような種類の鳥や花が選択され、如何に組み合わされて季節を表現しているかを中心に考察することにしたい。まず、四幅それぞれに描かれている花と鳥は以下の通りである(注12)。花(植物) 「春幅」 桃、竹 「夏幅」 梔子、蜀葵、萱草 「秋幅」 木犀(銀桂)、木芙蓉、菊 「冬幅」 梅、椿 「春幅」における花鳥のモチーフのうち、桃については、『礼記』「月令第六」に「仲春の月。(略)始めて雨水、桃始めて華さき。」とあるように、その花は古来春の象徴とされており、また鳩について、『宣和画譜』巻16「黄居宝」にも「桃花H鴿」などの春と関連づけられた画題が記されている。作例としては徽宗「桃鳩図」(個人コレクション)〔図12〕があげられ、「春幅」もこの伝統を継承したものである。大官鳥は鳴き声が美しい鳥として知られており、ここでは雲雀とともにその鳴き声が春の訪れを告げる鳥として使われていると思われる。さらに、「春幅」全体のイメージは、「竹外に桃花三両枝、春江水暖かなるは鴨先づ知る。」(蘇軾『東坡集』巻15)と詠じられる恵崇の「春江暁景図」にさかのぼることができる。「春江暁景図」は現存していないが、これによって水景に鴨類と竹、桃の花を配して春を表す手法は北宋時代に存在していたことがわかり、馬麟の「芳春雨霽図」もこの伝統を継承した作品といえよう。つまり、このような桃の花と水禽の組み合わせは、北宋時代から小景画に採用されることによって、水景と深く結びつくようになったようである。小景画ではないけれども、「朱瞻基行楽図」の画面右部分と呂紀「春幅」も、「芳春雨霽図」に類似する水景表現をもっており、このような伝統の中に位置づけられるだろう。鴛鴦、斑鳩(H鳩、鹿子鳩)、大官鳥(山呼鳥、喉噪I)、雲雀(告天子) 鴨(渓鳧)、黄鴬(黄鳥、黄J、倉庚、高麗鶯)、四十雀(大山雀、白臉山雀) 赤筑紫鴨(赤麻鴨、*鳧、黄鳧、黄鴨、紅雁)、九官鳥(秦吉了、了哥)、寿(綬)、帯鳥(練鵲、白練、変色三光鳥) 雉(高麗雉)、雀 鳥
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