Such coloured atmospheric effects have been rare in modern Japanese art. This is like a contemporary charcoal drawing by Millet. In effects of rain upon soaking foliage his tone is purer than Bunrin’s. Its exquisiteness of drawing and tenderness of colour are charming.― 151 ―教的画題であり、もっぱら新しい形式で、主題が壮大であるとはまでは言えないまでも、まずまずの純粋さを捉えて制作されており、四条派画家の中で最も類のない能力があることを示している、と述べており、芳園への評価が高いことをうかがわせる。また、《江島富岳図》〔図2〕(注6)に関してフェノロサは、と記し、大気の効果を彩色により描出することは、現代の日本美術においては稀である、と芳園を評価している。さらに、《田家図》〔図3〕(注7)について、フェノロサは、と論じており、ミレーのような同時代の木炭画のようであり、葉にしたたる雨の効果において、彼の色調は、文麟よりも純粋であると指摘する。また、その筆致の精巧さや彩色の柔軟さは魅力的であるとして高く評価している。確かに、芳園の作品を見ると、当時の円山・四条派作品には見られない冴えのある大気の描出や、応挙以上の精妙な写生画を見ることができ、同時代に活躍する画家の中でも随一の力量であることが推測できる。このように、『Epochs of Chinese and Japanese art』における四条派への評価は、日本滞在時に述べられることがなかったものであり、祗園中村楼での講演とは対照的な評価であったことがわかる。特に、西洋絵画との比較を通じて芳園を評価する傾向にあり、新機軸を出しているという点において、評価が高かったと考えられる。では、このようなフェノロサの評価が作品蒐集にどのような影響を及ぼしているのであろうか。フェノロサが「four landscapists」と位置づけた芳園や一鳳、華山、文麟といった4人の画家が両コレクション(計274点)の中でも上位を占めており、芳園作品が25点、一鳳作品が20点、華山作品が13点、文麟作品が12点所蔵されている。これら4名の画家の作品は両コレクションの中の4割を占める〔図4〕(注8)。このように、フェノロサの画家への評価が作品蒐集に反映されていることは、画家別の所蔵作品数からも
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