鹿島美術研究 年報第27号別冊(2010)
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― 227 ―個々の書名を記した目録は存在しない。その後1973年に同館から図書部門が独立して大英図書館となり、さらに数回に渡る移管の結果、現在、彼の旧蔵書は両館に分蔵されている。この参考文献は、和漢籍についてもアルファベットのみで表記されている。この為、本研究ではまず以下の手順を踏んだ。⑴国文学研究資料館「日本古典籍総合目録」データベース(http://www.nijl.ac.jp/)等を参照し、原書名を比定⑵既刊の大英図書館蔵書目録・同館閲覧室のカード目録、及び大英博物館所蔵品データベースを参照し、両館での所蔵状況を確認(注6)⑶原書に押された大英博物館受入時の日付印Acquisition date stamp〔図1〕を確認し、「27 JY 82」「13 FE 94」「21 MR 94」とあるものからアンダーソン旧蔵書を特定(彼は蔵書印を押す習慣を持たなかったので、この日付印だけが手掛かりとなる)以上の結果をまとめたのが、〔別表 アンダーソンの日本美術参考文献とその所蔵状況〕である。ここから、彼は〈日本美術史〉編纂にあたり、画家については『本朝画史』『画乗要略』『増補浮世絵類考』等各派の画人伝、画題については橘守国・大岡春卜・葛飾北斎等の画譜や絵手本に加え『和漢三才図会』『(増補頭書)訓蒙図彙大成』といった絵入事典の類、著名な作品については『画史会要』『聚珍画帖』『集古十種』等の複製図版を具体的な情報源としていた事が分かる(注7)。また日付印確認の結果、アンダーソン旧蔵と特定できた現存する両館蔵書は、同表「Anderson」の項に示した通り、和漢籍68件(『仏像図彙』『(増補諸宗)仏像図彙』は合せて1件とした)のうち58件(大英図45件、大英博13件)である。これらの原書には、画家名や略歴、主題解説部分の日本語を逐一英訳した鉛筆書入れ〔図2〕が多く残されており、アンダーソンが単に図版を眺めていたのではなく、文字情報を充分に咀嚼し活用した様子がうかがえる。なかでも参考文献筆頭にあげられた『本朝画史』の「本朝画印」部分には、Index of Honcho guainと題した自作インデックスが挿入されている〔図3〕。逆に、日本人による書入れは管見の限り、ごく僅かな頭注の墨書以外見出せなかった。この58件について、前蔵者や流通経緯を検討していきたい。まず蔵書印に着目すると、複数の書籍に同じ印を確認できれば、その使用者が直接的な提供者である可能性が高い。今回の調査では、22件の書籍に蔵書印を確認した。内訳は、まずサトウの使

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