鹿島美術研究 年報第27号別冊(2010)
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― 426 ―女性の場合も、入選者数は西洋画部で多いものの、入選率は東洋画部で高い。まず、東洋画部の台湾人女性画家を確認しておこう。筆頭に上げられる画家は陳進である。陳進は、台北第三高等女学校(以下、第三高女)を卒業後、女子美術学校(以下、女子美)へ留学。第1回台展から府展期まで連続入選し、美人画を得意とした。陳進に並ぶキャリアの画家はほかにいないが、第三高女卒業後に女子美へ留学した画家に、蔡品(1907〜?、台展2、3)、周紅綢(1914〜81、台展5、7、10)、郭翠鳳(1910〜35、台展7)がいる。周紅綢の可憐な少女を描いた《少女》(1936年、個人蔵)以外は、全て植物を主題にした作品で台展に入選している。また、内地留学の経験はないが、第三高女出身の画家に、蘇花子(生没年不詳、台展2)、黄華仁(1905?〜、台展3)、謝寶治(生没年不詳、台展4〜6)、林阿琴(1915〜、台展6〜8)、邱金蓮(1912〜、台展6、7)、陳雪君(1912頃〜?、台展6、7)、彭蓉妹(1912?〜、台展6〜8)、黄早早(1915〜99、台展7〜10)、黄新楼(1922〜、府展2、3、5)がいる。彼女たちの入選作も、黄華仁の《内房》(1929年、所在不明)のほかは、植物を題材にしたものである。ほかに、台北国語学校付属女学校(第三高女の前進)を卒業した最年長女性画家の張李徳和(1893〜1972、台展7、10、府展1〜6)、その次女で嘉義高女卒の張敏子(1920〜80、府展1)と三女で同校卒の張麗子(1922〜?、府展2、3)、漢学を学び廈門美術専科学校に留学した蔡旨禅(1900〜58、台展9)、淡水高女出身の林玉珠(1920〜、台展10、府展1、2、4)、詳細が不詳な余香(生没年不詳、府展6)がいる。彼女たちも植物を主な題材として制作しているが、林玉珠は異色で、入選作は風景3点、人物(和服・中国服・洋服の女性像)1点であった。彼女たちに共通することは、まず、台北の第三高女出身者が13名を占め、ほかの6名もそれぞれ異なる経歴だが、ほぼ高女出身者ということである。また、入選が台展の中後期、とくに第6〜8回に集中していることも注意される。これは西洋画には見られない現象である(注3)。さらに、題材を、多くの画家が植物に求め、総じて写生に基づき対象を繊細に静的に表現している。以下の章では、これら三点を念頭におきつつ、台湾人女性画家が東洋画部へ集中した要因を考察していきたい。なお、西洋画部に入選した台湾人女性画家は、黄荷華(1913〜2007、台展7、10)、張翩翩(1919〜?、府展1)と張珊珊(1920〜?、府展5)姉妹、陳碧女(1924〜95、府6)の4名であった。黄荷華は、台南第一高女から女子美へ進学。台南の洋画団体、南光社のメンバーだった黄欣の姪である。張翩翩は黄荷華の後輩である(妹の張珊珊は台南第二高女卒)。陳碧女は、台湾近代洋画を代表する画家、陳澄波の娘で嘉義高女を卒業している。西洋画部の台湾人女性画家は、台北以外の出身で、男性洋画家と

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