2 第2次調査の目的と方法第2次調査の目的は、金箔問題の解決、つまり金箔か金泥かの判別、金箔でない場合は箔足の描き方の技法、水流の部分からは金銀銅の金属元素が検出されなかったため、それに代わる有機色料の特定、流水部における型の使用の有無を確認することである。第2次調査は、2008年7月8日にMOA美術館において第1回研究会を開催し、東京文化財研究所の早川泰弘氏、城野誠治氏による第1次の蛍光X線分析、蛍光撮影の調査報告から開始した。前回の経験を踏まえて、紅白梅図の技法・材料の調査を科学調査に加えて、伝統工芸の技術者による技法調査と美術史家の協力を得ることにした。― 35 ―「新技術による無機材質分析」を試みた。⑵有機色料の調査ろうとする疑問の声が数多く寄せられ、金箔でなければそれに代わる材料は何か、箔足はどのような技法で描いたか、有機色料の特定、流水部に型の使用の有無など、未解決の課題が多く残されて、第2次調査の必要性が生じていた。⑴金箔の科学調査早川泰弘氏は、蛍光X線分析の再調査を実施し、中井泉氏(東京理科大学教授)は有機色料の特定は、植物性有機染料分析に実績のある下山進氏(吉備国際大学教授)に光ファイバーを用いる「3次元蛍光スペクトル非破壊分析法」を依頼した。⑶型の調査型の使用については、伝統工芸の作家に技法調査を依頼した。森口邦彦氏(重要無形文化財保持者)は、友禅の型染めを表現技法とする作家、鈴田滋人氏(重要無形文化財保持者)は木版刷り更紗の作家である。室瀬和美氏(重要無形文化財保持者)は、漆芸作家かつ文化財修復に実績がある。日本画家の立場から中野嘉之氏(多摩美術大学教授)に流水部の絵画技法の調査を依頼した。⑷その他の基礎調査金箔の基礎調査は文化財保存修復家の馬場秀雄氏(吉備国際大学教授)に依頼し、また金沢の金箔製造業㈱今井金箔の今井康弘氏に意見を求めた。その他に日本絵画史研究の立場から有賀祥隆氏(東北大学名誉教授)、玉蟲敏子氏(武蔵野美術大学教授)、林温氏(慶応義塾大学教授)に協力を求めた。鈴田滋人氏は、
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