3 結果と考察⑴金箔の基礎調査― 36 ―復元模造の過程で紙の素材により墨の発色が異なると報告を寄せたため、増田勝彦氏(昭和女子大学大学院教授)、宍倉佐敏氏(女子美術大学非常勤講師)に紙の材質調査を依頼した。下山進氏による流水部分の色料が墨の可能性を示したため、古墨の材質提供を書道家の矢萩春恵氏に依頼した。日本の金箔は、99%が金沢で生産されている(注2)。金箔は、製法により「縁金、上縁付は、延澄、箔打ちの制作工程があり、延金と上澄は澄屋、箔打ちは箔屋で分業される。金は、単に純金を叩いても延伸しないため、はじめに銀と銅を混ぜた合金をつくる。現在の一般的な金箔は、金94.43%、銀4.901%、銅0.661%の合金で、それを厚さ100分の3ミリまで帯状に打ち延ばす。通常、これを「延べ」と呼ぶ。延べは、約6センチ、重さ3.6グラムの小片に切り、これを「小兵〔図1〕」と呼ぶ。小重の工程を経て、厚さ1000分の1〜2ミリの「仕上がり澄(上兵は、荒金、小澄)」をつくる。重、大上澄は、箔屋に送られる。箔打ち師は、兵庫県名上澄は、11〜12の小片に切られ、1枚ずつ小間紙に引き入れ、通常1800枚を1束にして革袋に包み、現在では機械で10000分の5ミリまで打つ。次に箔打ち紙に引き移し、10000分の1〜2ミリになるまで打ち延ばして完成したものが縁付である。昔通りの縁付の箔は極めて少ない。金沢では、金箔の厚さを10000分の1ミリと言っているが、実際は箔打紙に強度がないので、技術があってもそこまで延ばすことはない。現状で一番薄く延ばせても10000分の3ミリである。純金の割合によって一毛色、二毛色、三毛色、四毛色、五毛色と呼び、純金箔と言えるのは五毛色と四毛色で、五毛色の金の含有量は97%である。四毛色は94%で、一番延びて薄い箔ができるため、四毛色を基準色としている。注目すべき縁付の特徴は、無数の穴が空いていることである。また箔打紙は紗付で漉いた紙なので、紗の目の跡も見え、箔打紙を挟んで作っ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■塩産の「箔打ち紙」と呼ばれる雁皮紙を準備する。箔打ち紙は、泥土を混入した雁皮紙を水や藁の灰汁、柿渋などに浸してから絞り込み、機械で空打ちと養生を繰り返して、約半年間かけて強靭な和紙に仕立てる。これを最終段階の箔打ち紙として用いる。■■■■■■■■■■付」と呼ばれる昔ながらの製法と、オイルショック以降に安価に制作する方法として「断切」が考案され、現在は二種類の製法がある。当然ながら、江戸時代に断切は存在しない。
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