3.邛■市花置寺摩崖造像(省級文物保護単位)邛■県城より西北に七キロの地点、西河郷花石山に位置する。同地にある小柏樹水― 467 ―きる。上から頭上で合掌する二手、頭上に掲げるも手先を欠失する二手、胸前で合掌する二手、腹前で鉢を持つ二手を表す。本来であれば頭上に掲げた二手の手先があった筈の部分からは、渦巻く光明が吹き出しており、その頂部は五つに分かれ、正壁頂部で横一列に並んで天蓋状を成す。その上には一体の如来坐像を中心として左右に各々合掌する長袂衣の立像一体、菩薩坐像一体、合掌する長袂衣の立像四体、如来寄りの腕を振り上げて龕口寄りの腕を下げ降ろす力士立像一体、如来坐像五体、計二十五体の像を乗せる。② 第八号龕〔図7〕龕高二七〇センチ、龕幅二四四センチの方形二重龕である。左足を踏み下げて台座上に半跏趺坐する千手観音像を奥壁中央に表し、その周囲を百体前後の乗雲像が取り囲む。中尊千手観音像は、髷を結い上げて山形宝冠をつけ、天衣・条帛・裙を纏う。胸飾・瓔珞・腕釧をつけ、裳懸を施した台座上に結跏趺坐する。正中線上には四対六臂の大手を表す。上から頭上で合掌する二手、手先を頭上に伸べる二手、胸前で合掌する二手、腹前に重ねる二手が確認できる。大手の外側には同心円状に小手を浅浮彫する。頭上に伸べる二手の手先からは、渦巻く光明が吹き出しており、その頂部は正壁頂部で横一列に並んで天蓋状を成す。その上には一体の如来坐像を中心に群像を配置するが、龕前に鉄柵が設けられていることから写真撮影と調査が困難であり、今回は充分に確認することができなかった。庫の半島の山上にあり、南面から西面に湾曲した左岸の岩上に十三龕が残る。第六号龕に貞元十四年(七九八)撰の碑文「大唐嘉定州邛県■■■■■無量■仏石■像■」が刻まれることから、千手観音龕を含む大半の造像が中唐期に行われたものとされている(注10)。③ 第一二号龕龕高三〇三センチ、龕幅二三七.五センチの方形二重龕である。台座上に結跏趺坐する千手観音像とその周りを囲む群像の痕跡が残るが、龕全体に風化甚大で詳細は不明である。但し、内龕正壁、左右壁の上辺は比較的に保存状態が良好で、天井沿いに
元のページ ../index.html#477