― 485 ―【形状】丈の高い垂髻は上下三段に分かれ、各段五束に振り分ける。髻の元結紐は下が三条、上が二条でその上に菊花形飾りをあらわす。髪すべて毛筋彫り。天冠台は紐二条に列弁、正面と両耳上には菊花形飾りをあらわし、さらに両耳上では緩く屈曲する。天冠台正面菊花形飾りの左右で髪をからめる。鬢髪一条耳を渡る。白毫相。耳朶環状貫通。三道。胸前で合掌。右足を外にして結跏趺坐。両足裏をあらわす。条帛、天衣、裙、腰布を着ける。天衣は両肩から垂下し肘で前膊内側に入り込むがその先は不明。胸飾、臂釧、腕釧をつける。【品質構造】檜。頭部は左耳輪と右耳後ろに矧ぎ目があり、体部の矧ぎ目は不明だが、おそらく前後二材製と思われる。両腕は肩、肘やや前方、手首で矧ぐ。両腰脇部、両脚部を矧ぐ。割首。条帛垂下部は正面、背面ともに別材を矧ぐ。表面は白下地を施し、髪は墨塗り、髪際の細かい毛筋と額中央の毛、眉、髭を墨書きする。天冠台、肉身部は金泥塗り。条帛表は朱地に切金で田字入り袈裟襷文、縁には群青地に彩色と漆箔で花文様を施す。同裏は緑青地に切金の格子文。天衣表は緑青地に切金で花弁のようなものが確認できるが詳細不明、両縁に切金線二条。同裏不明。裙表は丹地に切金の四ツ菱入り七宝繋ぎ文を地文とし、団花文を散らす。団花文は箔押しの上に彩色を施す。同裏は群青地に切金の変わり斜格子文。腰布表は緑青地、上縁に切金線二条。胸飾、臂釧、腕釧は各銅製鍍金かと思われる。像底は布貼りの上、漆塗りを施す。【保存状態】右肘やや前方より先後補(注8)。製(後補か)。割首。白毫木製。表面は布貼りし、肉身部、衣部ともに金泥塗り。衣部には切金文様および緑青の盛り上げ彩色を施す。各部の文様は以下の通り。覆肩衣表内区は切金の七宝繋ぎ文を地文に、盛り上げ彩色の花丸文を散らす。同周縁部は蓮華唐草文の盛り上げ彩色。内区との界は盛り上げ彩色で細線二条、外縁に細線一条。袈裟表条葉部は雲唐草文の盛り上げ彩色、田相部は切金の雷文繋ぎ。界は盛り上げ彩色で太線・細線各一条。同裏内区は切金の麻葉繋ぎ文、周縁部に宝相華唐草文の盛り上げ彩色。内区との界線は盛り上げ彩色で細線・太線各一条、外縁に細線一条。裙表は切金の地文不明、盛り上げ彩色で丸文を散らし、内部に鳳凰をあらわす。装身具すべて銅製。像底は布貼りの上、漆塗りを施す。像内からは納入品が確認されている。②滋賀・志那神社 普賢菩■坐像〔図2〕像高44.5cm(1尺4寸7分) 髪際高34.2cm(1尺1寸3分)(注7)。寄木造り。金泥塗り、彩色、切金、玉眼。建武元年(1334)銘〔史料5〕。
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