鹿島美術研究 年報第27号別冊(2010)
496/597

― 486 ―【形状】螺髪は旋毛形彫出。肉髻珠・白毫相。耳朶環状貫通。三道。右手を下にして禅定印を結ぶ。左足を外側にして結跏趺坐。内衣、覆肩衣、袈裟を着ける。袈裟は左胸部で背部から紐で吊る。【品質構造】針葉樹材(檜か)。頭体幹部は耳後ろを通る前後二材製。割首。両肩以下体側部と両脚部に別材を矧ぐ。腹部に一材を矧ぐ。両腕は前膊部を矧ぎ、手首先一材製で袖口に差し込む。像底に底板用の段差を一段刳り込むが、底板は現状両脚部にのみ残る。表面は現状、螺髪群青塗り、肉身部漆箔、衣部泥地彩色。眉、鬚は墨描き、唇は朱塗り。ただし衣部泥地彩色の下層には一部に布貼りのほか、朱下地の金(泥か)と切金文様、袈裟条葉部には唐草文の盛り上げ彩色が浮き上がる。【保存状態】肉髻珠、白毫、玉眼、両脚部の底板、表面仕上げ、以上後補。裳先欠失。両体側部材はそれぞれ像底から大腿部付け根にかけて大きく割損があり、その破片は別に保存。像底地付き部の一部に後補材をあてる。【形状】垂髻。髪すべて毛筋彫り。天冠台は紐二条の上に花弁形を配し、正面と両耳上に花形飾りをあらわす。天冠台正面では永明院像と同じ位置で同様に髪束を絡め、両耳上の花形飾り中央では髪束を一筋通す。鬢髪一条耳を渡る。白毫相。耳朶環状貫通。三道。右手を下にして禅定印を結ぶ。結跏趺坐。内衣、覆肩衣、袈裟を着ける。【品質構造】檜。頭体幹部は両耳後ろを通る前後二材製。両肩以下体側部と両脚部に別材を矧ぐ。体幹部材と両体側部材を角■(1.8cm×0.8cm)で留める。髻別材製。右前膊部に一材矧ぐ。両手首先一材製。像底に底板用の段差を一段刳り込む。表面は肉身部、衣部ともに■下地、金泥塗り。衣部には朱色の胡粉で盛り上げ彩色を施す。文様は以下の通り。内衣は雷門繋ぎ、覆肩衣表内区は花丸文、周縁部に植物文、界と外縁に細線二条。袈裟表条葉部に唐草文、田相部には切金文様が施されていたと思われるが現状不明。界は太線一条、細線二条、外縁に細線二条。同裏には鳳凰文、切金文様も一部認められるが詳細不明。背面には布貼りも認められる。【保存状態】底板欠失。髻、白毫、右前膊部、以上後補。③長野・薬師堂 薬師如来坐像〔図3〕(注9)像高71.0cm(2尺3寸4分)、髪際高60.2cm(1尺9寸9分)(注10)。寄木造り。漆箔、彩色、切金、玉眼。暦応三年(1340)銘〔史料6〕。④愛知・願成寺 釈■如来坐像〔図4〕像高40.3cm(1尺3寸3分)、髪際高31.5cm(1尺3分)(注11)。寄木造り。金泥塗り、切金、玉眼。貞和二年(1346)銘〔史料7〕。

元のページ  ../index.html#496

このブックを見る