鹿島美術研究 年報第27号別冊(2010)
534/597

■ 「マリア十五玄義図」(京都大学総合博物館)の中央に描かれる聖母子像を見ると、ケープをまとうマリアと、天球儀を手にする幼児キリストが一つに重ね合わされたものとも考えられるが、神戸市博本に描かれるのはひげをたくわえた成人男子であるため、やはり参照したのは本文に挙げた成人の救世主像であると思われる。また、ケープやヴェールに近いものは、たとえば「日教上人像」(青蓮寺)でも描かれるため、キリスト教と仏教とを問わず、聖職者を示すものとも考えられよう。― 524 ―■ 管見の限り、国内に残るキリスト教図像はもとより、The Illustrated BartschやThe New HollsteinDutch and Flemish Etchings, Engravings, and Woodcuts, 1450−1700にこのような図像は見当たらない。■ 日高薫氏の解説によれば、この円形の楯は、内膳系にのみ見出されるモチーフだという。本文前掲『南蛮屏風集成』,327−8頁.

元のページ  ../index.html#534

このブックを見る