― 563 ―2009年10月24日㈯ 14:45〜15:45シンポジウム「アンリ・リヴィエール ブルターニュと日本の近似性」パネリスト:フィリップ・ル・ステュム(県立ブルターニュ博物館 館長) 〔通訳:矢野聡子〕 飯山雅英(美術評論家) 藤村忠範(山口県立萩美術館・浦上記念館 学芸課主査)(藤村)アンリ・リヴィエールに限らず、多くの芸術家たちがブルターニュに集まって作品を残しましたが、ブルターニュのどこにそういう魅力があるのでしょうか。(ル・ステュム)ブルターニュは、地理的にはフランスの北西部に位置し、ブルターニュ語という特殊な地方言語が象徴するようにフランスの一部ではないといったような意味合いを持った土地で、知られ始めたのは1830年代からでした。ブルターニュの魅力は地理的なもので、画家や芸術家たちにとって風景、海岸線、刻々と変わる天気、気候などです。地理的な魅力の他には、非常に色彩豊かで、様々な形の民族衣装があります。もうひとつは、古い歴史を持っており、ケルト文明の影響を受けた場所であることです。そのような伝統が保たれていた場所でありながら、画家たちが滞在し作業できる場所を提供した先駆的な場所でもありました。(藤村)パリの近郊は畑の続く平地ですが、ブルターニュは山あり谷ありで、リヴィエールの別荘はトリユ河の河口の崖の上に位置します。河にはボートが浮かび、黒松が生い茂り、日本的な風景です。そういうところに、リヴィエールは惹かれたのだと思います。ブルトン語を話し、主食がそば粉のクレープで、お酒はりんごのシードルといったように、言葉も衣装も食べ物も異なる地方で、異国情緒あふれる土地であることが、画家たち、また、旅行者たちを集める要因だったと考えられます。(飯山)ブルターニュはユーラシア大陸の一番西にあります。日本は一番東ですが、良く似ています。パリの近郊は平地ですが、ブルターニュは、北はドーバー海峡、南と西は大西洋に囲まれた半島であり、険しい山もあります。日本料理がフランスで流行していますが、海苔、ワカメなどの海産物を作って売り始めたのがブルターニュの人です。フランスやヨーロッパでカニ風味の蒲鉾が売られていますが、これを始めたのもブルターニュの会社です。ケルト文明と日本神道は多神教で似ていますし、意識せずともお互いに心に触れ合うものが、日本とブルターニュにあると思います。(藤村)リヴィエールは、他の芸術家たちが集まる場所を避けて写生旅行をしたり、油絵を描かなかったりして、他の芸術家たちとは少し違った精神性を持った画家と思
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