鹿島美術研究 年報第27号別冊(2010)
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6月16日までハイデルベルクに滞在。この間、元カルルスルーエ造形大学教授H.ベルティンク、ベルティンク夫人C. イームと今回のシンポジウムにおける発表について、短時間であったが意見を交換。なお東洋における物語芸術について、ハイデルベルク大学のL. レッダーローゼ教授とも、昨年に引き続き意見の交換をしたかったが、残念なことに腰痛が悪化し、予定したほどの研究活動が行えなかった。6月21日 モスクワ着。6月23日 ロシア芸術アカデミー、プレジデント・ホールにおいて会議開始。午後のセッションの最初に‘Creating the Iconic Space. The Transformation of NarrativeLandscape’の標題で約20分間の発表とそれに続く質疑応答を行った。― 565 ―⑵国際会議出席① 「イコン的空間の諸相―そのテクスチュアリティーとパーフォーマンス―」ィエールの研究の対象になりました。彼自身は芸術家でありますが、自分のスタイルを確立するために、木版画、リトグラフ、最後には水彩画と技術を追求し、常に探究心のあった画家であったと思います。期   間:2009年6月23日〜25日場   所:ロシア連邦、ロシア芸術アカデミー報 告 者:大阪大学 名誉教授  辻   成 史発表に関しては、会議開催前に主催者から、日本の聖域の問題に触れて欲しいという希望が出されていた。とりわけ、主催者が強調する聖域(‘Hierotopia’)に関連した(祭祀的)行為(‘performativity’)に重点を置くよう要請があったので、発表時間のほぼ3分の2を日本問題の紹介と分析に充てた。結果として、それに対応する西欧美術の諸問題については、論理的展開が大雑把となり、十分説得的にならなかった恨みがある。質疑応答においても、日本美術の専門家は少なく、問題を深めるに至らなかった。他方、セッションの休憩時間にデンマークから参加したN. イサール氏と、今回の発表では触れられなかった、古代からビザンティン時代に至るChora概念の展開について有用な意見の交換を行った。コペンハーゲンでは、この問題をめぐって、研究グ

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