6月24日 この日は、本会議のマスター・マインドであるG. ヴォルフ氏はじめ、イタリアから参加のM. バッチ氏、岡山大学の鐸木道剛氏等が到着し、相次いで発表を行った。ヴォルフ氏は日本にも度々来訪し、また各地の国際会議でも顔なじみであるが、今回の発表は研究史批判も画像資料もなく、残念ながら、ごく表面的な概観に終わった感がある。それに対し、聖地のコピーであるモンテ・サクロという特殊なトポス、およびそこにおけるフランシスコ会修道士による観想方法に関するバッチ氏の研究は、大変興味深いものであった。今回日本から参加された東京大学の秋山氏は、来年度バッチ氏の招聘を企画し、氏も受諾されたようであるので、氏とのさらなる討論が期待される。さらにこの日の発表では、主催者リドフ氏の娘でヴォルフ氏の指導のもとでピサで研究を続けているM. リドヴァ氏の、シナイ山聖カテリーナ修道院蔵の多翼式イコンに関する研究成果の発表が、本報告者の関心と相覆うところが多く、豊富な語学力を駆使した優れた発表であった。6月25日 この日の発表はほとんどがロシア語による発表であり、一応同時通訳なるものが用意されていたが、通訳は大学院生によるアルバイトで英語力に乏しく、さらに同時通訳用のブースも設けられていない有様で、殆ど内容も聞き取れず、申し訳ないが昼近くに会議場を出、近くのプーシュキン文学館、プーシュキン美術館をゆっくり見学した。聞けば、午後のセッションに関しては主催者側も海外からの出席者に同情し、個人的に見学その他に回るよう指示したので、海外からの参加者の殆どは欠席したようである。6月26日 本会議への招聘を受けた際、国際学会にはよくある開催地近郊への見学旅行の有無を問い合わせたところ、そのような企画はないという返事であった。しか― 566 ―ループが組織され、集中的な議論が行われているとのことで、引き続き意見の交換が期待される。この日の発表のうちでは、セルビアから参加のD. ポポヴィッチ氏による、ノヴィ・バザール(ラス)近傍の大天使修道院岩面グラフィッティに関する考古学的報告が、人類学的視点から興味深かった。最近ビザンティン美術の若手研究者として活躍しているB. ペンチェヴァ氏が、旅券が取得できず欠席となったのは残念だった。この日の夜はアカデミー総裁招待の夜食会があったが、残念ながら欠席した。
元のページ ../index.html#577