鹿島美術研究 年報第27号別冊(2010)
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4月10日 「第一部 イタリアの歴史的都市」○司会:野口昌夫 (東京芸術大学)/ラファエーレ・ミラーニ(ボローニャ大学)○発表1:「歴史的都市―都市の再活性化のために」  ピエル・ルイージ・チェルヴェッラーティ(ヴェネツィア建築大学)○発表2:「都市修復の伝統的技法―マテーラ市の場合」  ピエトロ・ラウレアーノ(ユネスコ) ― 576 ―たる研究計画を通じ、イタリア国内およびアジアを含む国外諸国の多くの研究機関と連携しつつ、「都市の変容」のテーマを総合的・学際的視点(建築・都市計画・美学・美術史・文学・文化研究等)から研究する大規模なプロジェクトである。今回のシンポジウムは、この研究計画の一環として、2009年に同COEより東京芸術大学に対して共同開催の提案があり、実現に至ったものである。このシンポジウムは、日伊の共通する重要課題である、歴史的都市の変容・保存・将来への展望の問題を学際的に討議することを目的とした。歴史的都市がもつ伝統的都市景観および周辺地域の伝統的風景の変容の過程を探り、それをいかに保存し、その価値を将来に伝え、近代的発展のロジックと融合させていくかという問題が中心的主題である。イタリアでは、ルネッサンス以来、非常に活発な都市表象の伝統が存在し、都市のすがたは市民のアイデンティティや文化的プライドの重要な拠り所となってきた。同様に日本でも、洛中洛外図をはじめとする優れた都市表象が存在し、都市周辺の風景とともに、「日本的景観」の確固たる伝統を形作ってきた。このような都市の景観の問題は、単に過去の文化史的関心対象たるにとどまらず、近代以降のラディカルな社会的・経済的変化のなかで、文化的アイデンティティの拠り所である「都市のすがた」の価値をどのようにとらえ、保存あるいは活用していくかという、きわめて現代的な問題にもかかわっている。共通した問題意識をもち、かつ異なった社会的条件も多い日伊両国の都市の問題を扱うにあたり、両国の専門家による発言を通じて比較の視点から考える機会となるよう、第1日目をイタリアの問題の発表にあて、第2日目を日本の問題の発表にあてた。シンポジウム1日目は、イタリア大使参事官アルフレード・ドゥランテ・マンゴーニ氏らのあいさつの後、イタリア側パネラー5名の発表、さらに日本側2名によるコメントと質疑応答が行われた。続く2日目は、日本側パネラー6名の発表の後、両日の内容をもとに双方のパネラーが議論するというプログラムであった。以下に、発表題目とパネラー名を記しておく。

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