2.2008年度援助― 584 ―⑴外国人研究者招致① 「フランス近代美術史研究における社会史、フェミニズム理論の可能性」期 間:2009年10月19日〜27日招致研究者:アメリカ合衆国、ニューヨーク大学 教授リンダ・ノックリン(Linda Nochlin)報 告 者:京都工芸繊維大学 准教授 永 井 隆 則早稲田大学文学学術院 教授 坂 上 桂 子このたび、平成21年10月19日から27日まで、日本に招聘し滞在して頂いた、リンダ・ノックリン(Linda Nochlin)教授は、ニューヨーク大学/インスティチュート・オブ・ファイン・アーツ ライラ・アチソン・ウォレス近代美術史教授(Lila AchesonWallace Professor of Modern Art at the Institute of Fine Arts/New York University)である。教授は1931年生まれで、ヴァッサー・カレッジ学士号(1951)、コロンビア大学大学院修士号(1952)、ニューヨーク大学インスティチュート・オブ・ファイン・アーツPh. D(博士号)(1963)を取得後、イェール大学美術史教授、ニューヨーク市立大学教授、ヴァッサー・カレッジ美術史教授を歴任され、現在も、教育・研究に精力的に取り組まれている。リンダ・ノックリン博士は、世界を代表する、屈指のフランス近代美術史研究者の一人である。特に、クールベを中心とする写実主義、印象主義、スーラを中心とする新印象主義研究の専門家として国際的評価を得ている。その研究方法に関しては、構造主義、ポスト構造主義、ポスト・モダニスム以降の、人文諸科学のパラダイムシフトを受けたオリエンタリズム、ポスト・コロニアリズム研究を吸収した上で、フェミニズム美術史、またマルクス主義の立場からの社会史美術史研究に早くから着手し、この分野でのパイオニアとして確固たる地位を築いて来られた。教授の長年に亘る美術史研究の軸は、レアリズム研究とフェミニズム研究という2本の柱に集約される。前者に関しては、2007年冬、パリ、オルセー美術館で開催されたクールベ・シンポジウムで基調講演を務められ、後者に関しては、2009年、パリ、ポンピドゥー・センター企画の「elle@centrepompidou」展で講演会を依頼されるなど、今なお、ご自身の研究分野で世界のリーダーとして活躍されている。
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