⒂ASV, Nunziatura di Napoli, 20A, cc.404r-v(Macioce, op.cit., p. 268, doc.411を参照). この模写は現存せず、それが実際に制作されたのかどうかも不明である。V・パチェッリは、この模写がバルダッサーレ・アルヴィーゼの工房によって作られたのではないかと推測する(Pacelli,L’ultimo Caravaggio…, cit., pp. 136−139)。■ このフレスコ画の支払いをバッティステッロが受けたことを証する最古の文書記録(ASBN,Banco dello Spirito Santo, matr.71(E. Nappi, “I vicerè e l’arte a Napoli”, Napoli nobilissima, 22, 1−2,1983, p. 43を参照))は、1611年12月5日のものであるが、多くの研究者が主張するとおり、このフレスコ画の制作が1610年内に既に開始されていたことはほぼ間違いない。⒃ジェンティーレによるボルゲーゼ枢機卿宛ての1611年8月19日の書簡に基づく(ASV,⒄ジェンティーレによるボルゲーゼ枢機卿宛ての1611年8月26日の書簡による(ASV, Nunziatura⒅事実、17世紀の詩人シピオーネ・フランクッチがボルゲーゼ枢機卿の美術コレクションを称讃するために詠った1613年の詩(S. Francucci, La Galleria dell’Illustrissimo e Reverendissimo SignorScipione Cardinale Borghese cantata in versi, 1613, ed Arezzo 1647, pp. 266−268)以降、この絵についての記載は、同コレクションに関わる文書の中に継続的に現れる(F. Scannelli, Il microcosmodella pittura, Cesena 1657, a cura di G. Giubbini, Milano 1966, pp. 198−199; ASV, Inventario di tutti liMobili che sono nell’Appartamento Terreno che gode il Sig.r Principe di Rossano, 396(Macioce,op.cit., pp. 369−370, inv.66を参照))。⒆この頃、バッティステッロは自らの工房で、ジェノヴァの有力者マルカントニオ・ドーリアのための《聖ラウレンティウスの殉教》(消失)をはじめとする作品を制作していたことが知られている。《聖ラウレンティウスの殉教》の制作については、ドーリアのナポリにおける代理人ランフランコ・マッサの1610年5月11日の書簡(V. Pacelli & F. Bologna, “Caravaggio, 1610: la‘Sant’Orsola confitta dal Tiranno’ per Marcantonio Doria”, Prospettiva, 23, 1980, p. 24を参照)や、同年5月26日のバッティステッロへの支払い記録(Archivio Storico del Banco di Napoli(以下ASBNと略), Banco di Sant’Eligio, Giornale, matr. 42(S. Causa, op.cit., p. 352を参照))を参照。⒇バッティステッロがカラヴァッジョとじかに接触していたという見解に関しては、Pacelli,L’ultimo Caravaggio…, cit., p. 160; 宮下規久朗『カラヴァッジョ−聖性とヴィジョン』名古屋大学出版会、2004年、284頁を参照。なお、バッティステッロがカラヴァッジョ作品の斬新な様式にいち早く魅了され、その様式を熱心に研究して自身の絵に取り込んだことは、18世紀前半に伝記作者ベルナルド・デ・ドミニチによって報告されている(B. De Dominici, Vite de’ pittori,scultori ed architetti napoletani, Napoli 1742, ristampa anastatica, Sala Bolognese(Bo)1979, pp. 275−277)。― 86 ―Nunziatura di Napoli, 20A, cc.404r-v(Macioce, op.cit., p. 268, doc.411を参照))。Nunziatura di Napoli, 20B, cc.352r-v(Macioce, op.cit., p. 270, doc.415を参照))。di Napoli, 20B, c.367r(Macioce, op.cit., p. 270, doc.416を参照))。■ E. Fumagalli, “Battistello Caracciolo, 1612”, Paragone, 519−521, 1993, pp. 88−90.■ 角の生えた羊は、ローマのカピトリーノ美術館にある、洗礼者聖ヨハネの姿を表すと一般に考えられているカラヴァッジョの絵には描かれている。だが、この絵の主題は「洗礼者聖ヨハネ」ではなく、「解放されたイサク」である可能性が高い。この主題解釈については、以下の文献を参照。C. Rudolf & S. F. Ostrow, ““Isaac Laughing”: Caravaggio, non-traditional imagery and traditionalidentification”, Art History, 24, 2001, pp. 646−681; 宮下、前掲書、178〜202頁; 拙論「カラヴァッジョ作、通称《洗礼者聖ヨハネ》の主題解釈に関する一考察」『地中海学研究』第27号、2004年、
元のページ ../index.html#96