― 251 ―筆者の劉廷機は、康熙年間に江西按察使として景徳鎮のある江西省に赴任した。康熙54年(1715)に著した『在園雑誌』に、郎廷極が督造官として指導していた康熙官窯、通称「郎窯」の磁器を評している。「成、宣」すなわち明の成化と宣徳官窯を範とする倣古作を焼造したことが記され、注目すべきは、「国朝」清朝のそれは、成化や宣徳を凌ぐ出来栄えであると、明官窯に対する一種の競争意識、あるいは明官窯と比較して賞賛することに意味があったことがわかる点であろう。また成化や宣徳について語られているのが青花であることも重要である。② 梁同書『古窯器考』(注8)而陶器以青為貴、五彩次之。夫瓷器之青花、霽青大釉、悉借青料。晋曰:縹瓷。唐曰、千峰翠色。柴周曰:雨過天青。呉越曰:秘色。其后宋瓷■具諸色、而汝器宋焼者、淡青色。官窯以粉青為上。哥窯、龍泉窯其色皆青、白地青色亦青料。乾隆12年(1747)の科挙に進士合格した文人、梁同書が著した『古窯器考』「陶器青為貴」条では、青色の磁器がもっとも優れていると説き、興味深いことに、青で文様を描く青花と、霽青釉や青磁などの単色釉を共に青い磁器として一括りに論じている。青花を、中国陶磁の古典中の古典ともいえる、青磁と同列にみているのである。青花磁器に対して、同時代の新しいものというよりは、時代の隔たりのある古典として眺める視線が芽生えていたことがわかる。③ 唐英「陶成紀事碑記」『浮梁県志』(注9)(前略)一、倣宣窯霽紅、有鮮紅、宝石紅二種。一、倣宣窯霽青、色澤汎紅、有橘皮棕眼。(中略)一、倣成化窯五彩器皿。(中略)一、新製彩水墨器皿。一、新製山水、人物、花卉、翎毛、倣筆墨濃淡之意。
元のページ ../index.html#262