【第一類】① 美濃部氏架蔵甲本「酒呑童子屏風」美濃部氏、六曲一双 【第二類】― 355 ―まもなく成立したのではないかと想定できる。まずは一類の、一扇ごとに独立した場面をつくる作例について述べよう。押し絵貼り形式にて、各扇に概ね2場面(右隻第二扇は1、右隻第三扇は3場面)が描かれる。各扇同士に有機的な構図の繋がりはない。謹直な屋台の線描、サントリー本系の人物描写を比較的忠実に写し取っている点などから、17世紀半ば頃の狩野派絵師によるものと考えられる。② 『第二回祇園御霊会讃仰屏風祭』掲載本「大江山酒呑童子物語屏風」③ 美濃部氏架蔵乙本「酒呑童子屏風」美濃部氏、六曲一双独立した一扇ずつに1場面、計12図を描く押し絵貼り屏風。各扇の中央に、人物に焦点化した場面を描き、周囲には銀箔を散らす。総じてモチーフが少なく、凄惨な場面も除かれた穏やかな雰囲気を有している。美濃部氏の言葉を借りれば「裕福な庶民の座敷を飾る工芸品」(注2)としての要素が強い作例。江戸後期。続いて第二類は、屏風全体を一つの画面として、数段の霞や樹木、土坡で区切りながら、複数の場面を配置するものである。④ 日本民芸館本「大江山図屏風」日本民芸館、六曲一隻町絵師の手による江戸初期頃の作例。画面を霞で上下2段に分割し、左下から馬蹄形に左上へとストーリーの順に5場面を配置する。本来は、物語前半を描く隻を持つ一双屏風であったと想定される。所在不明、六曲一隻〔図1〕一扇を独立した画面と捉え、各扇に1から2場面を規則的に配置する。多様な色彩の雲、建築的な整合性には欠けるが自由で多面的な視点で描かれた建築物など、奈良絵風の様式が色濃い。物語後半の部分を中心に描くことから、失われた右隻の存在も想定しうる。江戸前期から中期頃か。
元のページ ../index.html#366