1.CIEライブラリーここでは、「実験工房」結成前から活動初期に、メンバーの交流および海外動向を― 398 ―㊲ 「実験工房」研究─海外動向との関わりを中心に─研 究 者:神奈川県立近代美術館 非常勤学芸員 西 澤 晴 美はじめに実験工房(Jikken Ko-bo- / Experimental Workshop)は、主に美術家と音楽家からなるグループであり、1951年の結成以降、演奏会や展覧会にとどまらず、舞台や映像作品など美術と音楽を融合した発表形式を追求し、活動を展開した。メンバーは主に音楽部門と造形部門に分けられる。音楽部門には作曲家の武満徹、鈴木博義、湯浅譲二、福島和夫、佐藤慶次郎、ピアニストの園田高弘、音楽評論家・詩人の秋山邦晴、造形部門には北代省三、山口勝弘、福島秀子、写真家の大■清司、版画家の駒井哲郎、さらに舞台照明家の今井直次、技師の山崎英夫がいた。美術評論家の瀧口修造がその活動を全面的に支援し、彼らの思想にも多大な影響を与えていた。正式な解散はしていないが、グループとしての活動が行われたのは1957年頃までである。芸術領域の枠を超えた「実験工房」のインターメディア的活動は、戦後美術を牽引する重要なものと捉えられ、近年では山口勝弘資料データベースの構築(注1)や、手塚美和子の博士論文Jikken Kobo (Experimental Workshop): Avant-Garde Experiments in Japanese Art of the 1950s(注2)が発表されるなど研究の活発化が見られる。「実験工房」は、その活動が美術だけでなく、音楽、演劇、舞踊の領域にわたっていることから、考証の余地が未だ多く残されている。筆者はこれまで、共同制作者である演出家や舞踊家との関わりに重点を置いて研究を進めてきたが(注3)、本研究では、これまであまり考察を深められなかった「実験工房」と海外動向との関わりに焦点をあてることとした。この観点からは大谷省吾がモホリ=ナジやペヴスナー、イサム・ノグチら先行例からの影響を指摘し、検討課題として挙げている(注4)。それを踏まえ、本論文では海外動向を入手する数少ない拠点の一つであったGHQの民間情報教育局(Civil Information and Education / CIE)の図書館「CIEライブラリー」、イサム・ノグチ、ジョン・ケージとの関わりに着目し、考察を行うこととする。吸収する重要な拠点となったCIEライブラリーを取り上げる。「実験工房」の美術部門メンバーとなる北代省三、福島秀子、山口勝弘の3名は、
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