⑸ 奥健夫氏のご教示による⑹ 仙台東照宮勧請遷宮時の記録である『奥州宮城郡国分小田原 東照宮御遷座之雑記』(斎藤報恩会蔵)の承応3年3月13日条に、「御神躰并御本地堂薬師日光月光十二神将御内陳楼門両所之随身狗等者大仏師左京法橋幸和彫刻之」とあるほか、記録の「薬師」にあたる薬師如来坐像(仙台東照宮本地堂伝来、仙岳院蔵)の底板に朱漆で「奉真壁五左衛門尉正家 作者大仏師左京」の銘が記される。また同像の台座裏面にも同様の墨書銘があり、こちらは「承応二年 」の年紀も記されている。現存する諸像の作風が七条仏所の作例に通じることから、当時左京を称した康知が指導的立場で造像にあたった可能性が考えられる。 ただし、これら仙台東照宮に関わる造像のうち先掲『東照宮御遷座之雑記』中の「狗」にあたるとみられる本殿安置の獅子・狛犬1対は、台座裏に「洛陽大宮方上之大仏師 吉野右京造 慶安五年四月吉日」の墨書があるとされ(※東照宮宮司 高崎恒晴氏のご教示による。)、こちらは吉野右京藤原種久(種次)の作である。記録が必ずしも事実を伝えていない例が知られる以上、作者については慎重に検討することが必要である。 なお、薬師如来をはじめとする薬師三尊十二神像の法量・構造については、次の文献を参照されたい。渡辺洋一「仙岳院所蔵旧東照宮薬師堂持仏について」『東北学院大学東北文化研究所紀要』第15号,東北学院大学東北文化研究所,1984年⑺ 堀野宗俊「資料紹介 雲居希膺自筆本「仮題開眼誠述」について」『瑞巌寺博物館年報』第9号,⑻ 口絵解説「天祥院殿横尾氏像」『瑞巌寺博物館年報』第15号,瑞巌寺博物館,1990年⑼ 田沢裕賀「伊達政宗夫妻像」解説 『開山無相大師六五〇年遠諱記念 妙心寺』読売新聞社,― 498 ―〈謝辞〉撮影者図6〜10:野久保昌良氏の指導により東北大学文学研究科東洋・日本美術史研究室撮影。図11、12、16、17:野久保昌良氏撮影。本報告にあたり、各ご所蔵者をはじめ大分県立歴史博物館、東北大学文学研究科東洋・日本美術史研究室、瑞巌寺宝物館、文化庁文化財部美術学芸課の皆様のご高配とご助言を賜りました。末筆ながら記して篤く御礼申し上げます。2009年注』上・下 大雄山善應寺,2005年 に所収の法語・鐘銘などによる。瑞巌寺博物館,1983年
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