― 514 ―㊽ 官展系洋画の研究─岡田三郎助と和田英作─【岡田三郎助・和田英作に関する資料のデジタル化】(凡例)TD=テキストデータ化済PDF=PDFデータ化済・2010年度の研究作業としては、岡田三郎助研究において現在第一人者の立場にある研 究 者:福岡大学 人文学部 教授 植 野 健 造ここで言う官展とは、1907年に開設された文部省美術展覧会(文展)と、その流れをひく、帝国美術院展覧会(帝展、1919年)、新文部省美術展覧会(新文展、1937年)、そして第二次大戦後の日本美術展覧会(日展)などの官設展覧会のことである。この研究では、官展系の重要な洋画家である岡田三郎助(1869−1939)と和田英作(1874−1959)の二人に焦点をあてる。前者については1993年に佐賀県立美術館で「岡田三郎助展」が、後者については1997年に静岡県立美術館と鹿児島市立美術館で「和田英作展」が開催され、それぞれの画家の画業の全体像が紹介されたことの意義は大きい。しかし、黒田清輝や藤島武二などの同じ官展系の洋画家はもちろん、それ以前の高橋由一などの明治前期の洋画家や、青木繁、萬鉄五郎、関根正二など個性的な画業を展開した明治後期以降の官展系以外の画家たちと比較しても、二人の画家研究の現状は活発な状況にはない。いまだ画家に関する基礎資料をまとめた文集、資料集が公刊されていないことが、その要因の一つと考えられる。この研究の目的は、二人の画家の基礎となる資料を集成することにある。そのことは、先行研究者の成果を継承し、次世代の研究者に引き継ぐことであるとも考えている。その方法として、作品データベースと文集などのテキスト資料をデジタルデータ化し、広く研究者の間で共有できるようにすることである。基礎資料が広く研究者のあいだで共有化されれば、二人の画家の研究はもちろん、日本近代美術史におけるアカデミズムの功罪について、より活発な論議が可能になると考える。ここでは、これまでのデータ化の成果を一覧として以下に記し、本研究の報告としたい。今後は、さらに関係者の協力を得て、データ化の作業を進めたいと考えている。さらにデータの共有化の方策を実現することが今後の課題である。
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